フォルクスワーゲン―米でEV生産へ、背景に政府の圧力も―

自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW、ヴォルフスブルク)は14日、米テネシー州チャタヌーガ工場で電気自動車(EV)を生産する計画を発表した。電動車の販売を今後、世界的に急拡大していく戦略に基づく措置。ドイツ車の輸入関税を米国が引き上げることを回避する狙いもある。

チャタヌーガ工場に約7億ユーロ(8億ドル)を投じて、EV用プラットホーム「MEB」をベースとする車両の生産を2022年から開始する。まずはSUV「ID. CROZZ」を生産。その後、マイクロバス「ID. BUZZ」を追加する。新規雇用は最大1,000人を見込む。

VWはMEBベースのEVを欧州、中国、北米の計8工場で生産し、電動車の年産台数を25年までに100万台超へと引き上げる計画だ。8工場のうち4工場はドイツ(ツヴィッカウ、エムデン、ハノーバー、ドレスデン)、2工場は中国(安亭鎮、仏山)で、残りはチャタヌーガとチェコのムラダー・ボレスラフ。

米国は対欧州連合(EU)で年に650億ドルもの貿易赤字を計上していることから、その是正を求めている。特に同赤字の半分弱に当たる約300億ドルを占めるドイツの自動車・自動車部品業界には米国生産の拡大を通して貿易赤字削減に貢献することを強く要求。昨年12月にはトランプ大統領が独自動車大手3社の代表と会談した。

VWのヘルベルト・ディース社長はこの時、米国にEV工場を設置する意向を表明していた。今回の正式発表に当たってもドイツ車への上乗せ関税を回避することがチャタヌーガ工場への新規投資の目的の1つであることを認めており、トランプ大統領は15日ツイッターで、VWの投資決定を「大きな勝利だ」と自画自賛した。

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