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2019/1/23

総合 - ドイツ経済ニュース

5Gインフラからの華為排除を政府が検討か

この記事の要約

中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の製品を次世代(5G)通信インフラから排除することを、ドイツ政府が計画しているとの観測が浮上している。緑の党の質問に対する連邦内務省の回答をもとに経済紙『ハンデル […]

中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の製品を次世代(5G)通信インフラから排除することを、ドイツ政府が計画しているとの観測が浮上している。緑の党の質問に対する連邦内務省の回答をもとに経済紙『ハンデルスブラット(HB)』が報じたもので、どのようにして華為を排除するかを現在、検討しているという。同政府はこれまで、特定の企業の製品を5Gインフラから除外することに否定的な立場を取ってきたが、米政府の圧力や他の国の華為締め出し方針を受けて、姿勢を改めるもようだ。

中国の通信設備・端末メーカーに対しては製品に組み込んだ部品などを通してスパイ活動を行っているとの批判がある。特に華為は非公開企業で事業活動に不透明な部分が多いことから中国政府・軍との関係が深いとみられており、オーストラリアとニュージーランドは5Gシステムに同社製品を用いないことを決定。英通信大手BTは華為製品を5G通信網の主要部品に使用しないだけでなく、既存の基幹通信網からも取り除くことを昨年12月に明らかにした。

華為排除の動きは今年に入っても続いており、ノルウェー政府は今月上旬、5Gインフラからの同社製品締め出しを検討していることを明らかにした。

こうした動きの背景には同社製品を用いないよう米国政府が働きかけていることがある。ドイツテレコムは米移動通信子会社TモバイルUSとソフトバンクの米子会社スプリントの合併計画の承認を得るために華為製品を調達先から除外する考えを先月、示唆した。

独政府はこれまで、米国に追随しない姿勢を示してきた。ペーター・アルトマイヤー経済相は先月、通信など「重要なインフラに用いられる製品はすべてセキュリティが確保されていなければならない」と前置きしたうえで、そうした前提が満たされていればどのメーカーの通信機器を採用するかは通信サービス事業者の自由だと指摘。5G通信インフラへの華為製品投入に問題はないとの見解を示していた。

情報機関への協力義務が懸念材料

だが、政府はこうした立場を改めたもようだ。HB紙によると、政府内では現在、5G通信網のセキュリティ規定を華為が条件を満たせないような形へと厳格化することを議論している。そうした措置で同社を排除できない場合は電気通信法の改正で対応することも視野に入れている。米政府関係者は独官僚とベルリンで行った協議で、華為製品を使用しないよう警告したという。

与党・社会民主党(SPD)のイェンス・ツィンマーマン連邦議会議員(デジタル政策担当)は同紙に、華為が中国政府のためにスパイ活動を行っているという疑惑は払拭されていないとの見方を示した。

華為に対しては欧州連合(EU)の欧州委員会も警戒感を示している。同委のアンドルス・アンシプ副委員長(デジタル単一市場担当)は先月、中国のハイテク企業は中国情報当局と協働し、暗号化されたデータに当局がアクセスできるようにすることを義務付けられていると明言。同国製通信機器の利用に懸念を示した。2017年6月に施行された中国の国家情報法では国の情報活動への全市民・組織の協力が義務付けられている。

5Gが実用化されると、大量の機器がネットワークでつながり、莫大な情報が常に自動的にやりとりされるモノのインターネット(IoT)社会が本格的に到来する。そうした情報には高度なセキュリティが要求される公的機関や自動運転車、機械のデータも含まれることから、西側諸国は中国の通信機器メーカーに神経をとがらせざるを得ない状況だ。

ただ、華為製品の排除に対しては専門家の間から、5G通信網の構築が遅れるだけでなく、構築コストも大幅に膨らむとの懸念が出ている。通信大手の管理職は匿名で、5Gのグローバル競争から脱落しないためには華為製品の利用が必要不可欠だとの認識を示した。華為は5G分野の特許を数多く持つうえ、競合に比べて製品価格も低いという事情が背景にある。