国際会計事務所のアーンスト・アンド・ヤング(EY)は7日、英国の欧州連合(EU)離脱に伴い、投資銀行や保険会社などの金融機関が総額8,000億ポンド(約111兆円)規模の資産を英国から他のEU加盟国に移すとの見通しを明らかにした。離脱後もEU内の顧客向けに安定的にサービスを提供するため、欧州事業の拠点だけでなく関連する資産もEU側に移転する動きが加速する可能性がある。
EYが英国に拠点を置く金融機関222社を対象にEU離脱への対応を調査したところ、2018年11月末時点で20社がEU側に資産を移す方針を明らかにした。ただ、移転する資産規模は公表していないケースもあるため、EYが算出した金額(8,000億ポンド)は「控え目な推計」と説明している。別の調査によると、独フランクフルトに移される資産だけで8,000億ユーロ(約100兆円)に上るとの試算もあり、移行期間が設定されない「合意なき離脱」の恐れがくすぶるなか、実際にはさらに金額が膨らむ可能性がある。
一方、EYの調査では銀行の55%、資産運用会社の44%、保険会社の42%が一部事業の移転を決定または検討中と回答した。移転先としてはダブリンが最も多く、フランクフルト、ルクセンブルク、パリと続いている。
EYによると、調査対象となった金融機関では英国が離脱を決定した16年6月の国民投票以降、EU側でこれまでに約2,000人を新規採用している。EYは欧州事業の機能移転によって約7,000人分の業務がEU側に移るとみており、3月末の離脱に向けてダブリンやフランクフルトなどでは現地採用の動きがさらに活発化する見通しだ。