ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領は22日、独西部のアーヘンで新しい友好条約に調印した。両国の友好関係の基礎を築いた1963年のエリゼ条約に続く取り決めで、2国間関係をこれまで以上に緊密化することを目的としている。
エリゼ条約は普仏戦争(1870~71年)、第一次世界大戦(1914~18年)、第二次世界大戦(1939~45年)と敵対的な関係にあった両国の和解に向けて仏ドゴール大統領(当時)と独アデナウアー首相(同)が調印したもの。両国は同条約に基づき定期首脳会談の開催や若者の交流促進などを行い、欧州統合のけん引車となってきた。
2国間関係は現在、極めて良好なものの、マクロン大統領は英国の欧州連合(EU)離脱決定、ポピュリズムの台頭などで揺れるEUの結束を強化するために、EUの基軸国である独仏の関係を一段と緊密化することを提唱。2017年9月に仏ソルボンヌ大学で行った演説で、「私はドイツに対し何よりも新しいパートナーシップを提案したい」と明言した。
アーヘン条約はこれを受けて作成されたもので、「独仏の友好関係を新たなレベルに引き上げること、すなわち欧州の繁栄のための友好関係とすること」(独政府)を目的としている。具体的には◇欧州の重要な国際会議の前に両国のあらゆるレベルで協議を行って政策方針をすり合わせる◇EU域外の地域の安定化に向けた共同部隊の創設や武器輸出の共同化など外交・安全保障政策の緊密化◇ドイツの国連常任理事国入りをフランスが支持◇共同のルールを持つ経済圏の創設――などが取り決められている。
アーヘンは中世カロリング王朝のカール大帝が最も重要な活動拠点とした都市。カール大帝の支配領域はEUの起点となった欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)の加盟6カ国に及んでおり、同市はEU統合を象徴する「精神的な首都」となっている。独仏両国は新友好条約の趣旨を踏まえて調印の場にアーヘンを選んだ。調印式には欧州委員会のユンケル委員長などEU諸機関の代表が列席した。