独高級車大手のBMWとダイムラーが提携分野の拡大に向けて協議しているもようだ。経済紙『ハンデルスブラット』が両社関係者の情報として21日、報じたもので、自動運転技術が中心テーマになっている。自動運転分野では米IT大手が主導権を握る恐れがあることから、提携が視野に入ってきた。両社は報道内容へのコメントを控えているものの、原則的に提携を排除しない立場を表明した。
BMWのハラルド・クリューガー社長と、5月に社長に就任するダイムラーのオーラ・ケレニウス取締役(研究開発担当)が協議を進めている。自動車業界では車両の電動・IoT化を背景に開発コストが膨らんでいることから、合従連衡の動きが活発化しており、大衆車大手の独フォルクスワーゲン(VW)と米フォードは15日、中型ピックアップと小型商用車の開発・生産で協業合意した。電動車、自動運転車、移動サービス分野の協業も検討する。
BMWとダイムラーは2008年、部品の共同調達を開始した。15年にはVW子会社のアウディも含めた3社でデジタル地図大手のヒアを共同買収した。BMWとダイムラーは昨年、移動通信サービス事業を合弁化することでも合意している。
現在は調達提携分野拡大や、コンパクトカーでのプラットホーム共有化などさらなる分野で協力することを検討している。そのなかで最大の焦点となっている自動運転技術分野で、ダイムラーはすでにサプライヤー大手の独ボッシュと協業。BMWも半導体大手の米インテルなどとアライアンスを形成した。両陣営はともに21年に自動運転車を市場投入することを目指している。
だが、自動運転車を実用化するためには膨大な距離のテスト走行を通した安全性の確保や優れたアルゴリズムの開発など大きな課題を克服しなければならない。米IT大手はこの分野で先行。VWのヘルベルト・ディース社長は昨年、同社はグーグル系の開発会社ウェイモより2年、遅れているとの認識を示した。
ウェイモは車両生産には乗り出さず、グーグルのスマホ戦略と同様に、自動運転車用のOSを自動車メーカーに提供することで業界標準を確立し覇権を握る意向だ。BMWとダイムラーはこれを脅威と感じ自動運転車開発の共同化や特許の相互活用を検討している。
交渉は初期段階にあり、成立するかどうかは定かでない。ブランドの独自性を重視する両社の技術者の抵抗や、独禁法上の問題などハードルは高い。