ドイツのアンゲラ・メルケル首相は4日から2日間、日本を公式訪問した。訪日は2年半ぶりで5度目。日本と欧州連合(EU)の経済連携協定 (EPA)が1日に発効した直後の訪日であり、多国間主義に基づく自由で開かれた通商体制の意義を安倍晋三首相とともにアピールした。
日本とドイツはともに輸出依存度が高い。このため世界最大の経済国である米国と中国に大きく依存している。
中国は近年、技術・経済面で実力をつけ、経済以外の分野でも世界的に大きな影響力を持つようになっている。米国は「アメリカ第一」を打ち出すトランプ政権の成立後、国際協調主義から転換。経済分野では保護主義を前面に押し出している。
国際情勢のこうした変化を受けて、日独両国は急速に接近。多国間主義や自由貿易体制の堅持で立場が一致し、中国政策でも利害の共通点が増えている。
メルケル首相は首脳会談後の記者会見で、アジア太平洋、アフリカ、欧州で経済的、地政学的な存在感を高める中国に言及。同国とは緊密に協力していかなければならないと同時に、利害や立場の異なる問題について話をしていかなければならないということで安倍首相と意見が一致したことを明らかにした。
そのうえで、アフリカの開発支援で日独はこれまで以上に協働できると指摘。両国の支援プロジェクトの統合などを提起した。中国が巨額支援でアフリカ諸国への影響力を強めていることが背景にある。この問題に絡んでは河野太郎外相が昨年9月の訪独時に、西側のアフリカ支援を共同化して中国に対抗することを提唱しており、両国はアフリカ支援の足並みをそろえる可能性が出てきた。
中国はEU加盟を目指す西バルカン諸国も広域経済圏構想「一帯一路(BRI)」を通して勢力圏に組み込もうとしており、EUは神経をとがらせている。河野外相とドイツのハイコ・マース外相はこの事情を踏まえて昨年、西バルカン諸国の改革支援で日独の連携を進めることなどで一致した。
メルケル首相は今回、西バルカン支援は「日本とEUの協働の興味深い分野だ」と発言。次期EU・西バルカン首脳会議に安倍首相を招待したいと述べた。安倍首相は、欧州と西バルカン諸国は共通の価値で深く結ばれているとして、これらの国の欧州統合をドイツとともに支援していく考えを明らかにした。