EU域外からの投資への審査を厳格化、欧州議が可決

欧州連合(EU)の欧州議会は14日の本会議で、EU域外からの直接投資に対する審査を厳格化するための規則案を賛成多数で可決した。インフラやハイテクなどの産業分野を対象に、国ごとにばらつきがあった審査基準を統一し、加盟国と欧州委員会が安全保障や治安などの観点から域外の企業による欧州企業の買収などを審査できるようにする。閣僚理事会の承認を経て新ルールが導入される。

EU内では数年前から中国企業による買収が相次ぎ、技術流出とそれに伴う安全保障への影響を懸念する声が高まっている。欧州委は2017年9月、外国からの投資を制限する一方、国家主導の対外直接投資によって戦略目標を達成しようとする新興国の動きを問題視し、戦略的に重要な産業分野に対する投資や買収への監視強化を目的とする規則案を提示した。

規則案によると、審査対象となる産業分野はエネルギー、運輸、通信、データ、航空・宇宙、防衛、金融、半導体や人工知能をはじめとする先端技術など。さらに欧州議会での審議を通じ、新たに水資源、医療、メディア、ナノテクノロジーなどが重要セクターに加わった。

審査方法としては、まず買収ターゲットとなった企業が拠点を置く加盟国が予備的な審査を行い、欧州委と他の加盟国に結果を報告。EU全体で情報を共有し、欧州委は必要に応じて買収認可の可否について意見を伝える。ただし、最終判断は標的となった企業が拠点を置く国に委ねられる。

一方、域外からの投資に複数の加盟国が関与するケースや、複数のパートナーによる研究開発プロジェクトを支援する枠組み「ホライズン2020」、欧州衛星測位システム「ガリレオ」など、EU全体の利益に影響が及ぶ案件については欧州委が直接審査を行う。

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