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2019/2/27

総合 - ドイツ経済ニュース

業績予測の下方修正が急増、経済の世界的な減速や通商摩擦背景に

この記事の要約

業績見通しを下方修正する動きが昨年、ドイツ企業の間で急速に増加したことが、監査法人アーンスト・アンド・ヤング(EY)の調査で分かった。経済の世界的な減速や通商摩擦が受注減や販売価格の下落を通して売上・利益の下振れにつなが […]

業績見通しを下方修正する動きが昨年、ドイツ企業の間で急速に増加したことが、監査法人アーンスト・アンド・ヤング(EY)の調査で分かった。経済の世界的な減速や通商摩擦が受注減や販売価格の下落を通して売上・利益の下振れにつながっている。世界経済は好転の見通しが立っておらず、独産業連盟(BDI)のヨアヒム・ラング専務理事は英国が新協定を締結せずに欧州連合(EU)から離脱する「ハードブレグジット」や通商摩擦の激化懸念を踏まえ「世界的な景気後退リスクは大幅に上昇した」との見方を示した。

フランクフルト証券取引所の「プライム・スタンダード」に採用される上場企業309社を対象にEYが実施した調査によると、2018年に売上・利益予測を下方修正した件数は前年の93件から144件へと55%増加し、過去最高を更新した。予測を少なくとも一度、引き下げた企業の割合は34%に上る。最大手企業30社を対象とするDAX(ドイツ株価指数)の採用企業では自動車部品大手のコンチネンタルと総合医療大手のフレゼニウスがともに2度、下方修正している。

下方修正の理由としては「景気・市場の悪化」との回答がダントツで多く44%に達した。2位の「コスト」「引当金や罰金などの特別要因」は12%にとどまった。

売上・利益予測の上方修正件数は過去最高となった前年(195件)を29%下回る138件へと落ち込んだ。下方修正の件数が上方修正を上回るのは14年以来で4年ぶり。下方修正は14年の67件を115%も上回っている。

18年の下方修正を時期別でみると、上半期(1~6月)は40件にとどまったものの、下半期(7~12月)は104件へと急増。特に最終四半期の10~12月は69件と多かった(7~9月は35件)。

10~12月に件数が大幅に増えた理由の一つは、年度末を目前に控え業績目標を達成できないことが多くの企業で明らかになったためだ。10~12月は毎年、下方修正件数が最も多い。

だが、18年は前年の38件、前々年の23件を大きく上回っており、年度末直前という事情だけでは説明できない。

ドイツの有力な景気指標の一つであるIfo企業景況感指数(2015年=100)をみると、18年8月の104.0を直近のピークに下落が続いており、2月には98.5まで落ち込んだ。製造業新規受注も振るわず、昨年12月は前月比で実質1.6%減となり2カ月連続で落ち込んだ。鉱工業生産は9月から4カ月連続で低下しており、多くの企業は景気の冷え込みを背景に業績予測の下方修正を余儀なくされた格好だ。

大企業で下振れ多く

売上・利益予測の下方修正が多かったのは大手企業で、年商50億ユーロ超の企業では37%、同10億~50億ユーロでも38%に上った。1億~2億5,000万ユーロの中堅企業では29%にとどまっている。EYの調査担当者はこれについて「世界的に活動する大手メーカーは過去数十年間、グローバル化の恩恵を特に強く受け、グローバルな生産体制を構築した」と指摘したうえで、「まさにこうした大手企業が緊迫した地政学情勢、新しい通商制限、サプライチェーン寸断リスクの下で苦慮している」と説明した。

製造業で下方修正の割合が最も高かった業界はグローバル化が特に進んだ自動車で、75%に上った。消費財(同52%)、化学(43%)も調査対象企業の平均(35%)を上回っている。景気変動の影響が小さい医薬品・バイオ・医療技術は19%と比較的少なかった。

世界122カ国のエコノミスト1,293人を対象に行ったアンケート調査をもとにIfo経済研究所が今月中旬発表した今年第1四半期(1~3月)の世界景況感指数はマイナス13.1ポイントとなり、景気拡大・縮小の目安となるゼロを2四半期連続で下回った。同指数の悪化は4四半期連続。今後6カ月の見通しを示す期待指数は前期のマイナス15.7ポイントからマイナス27.7ポイントへと落ち込んでおり、景気回復の兆しはない。企業はこうした事情を踏まえ、19年の業績見通しに幅を持たせるなど慎重な姿勢を示している。