EU産業政策で独仏が共同歩調、競争力強化のマニフェスト発表

ドイツのペーター・アルトマイヤー経済相とフランスのブリュノ・ル・メール経済・財務相は19日ベルリンで、欧州連合(EU)の産業競争力強化に向けたマニフェストを発表した。グローバルレベルの競争が激化するなかで欧州が勝ち組として生き残るために必要な措置として、◇重要産業・技術の公的支援◇競争法の改正◇外資からの重要産業の保護――の3点を指摘。これらの課題への取り組みを5月の欧州議会選挙後に成立する次期欧州委員会に働きかけていく意向を示した。

アルトマイヤー経済相は5日、ドイツとEUの経済競争力強化に向けた長期戦略「国家産業戦略2030」を発表した。中国の台頭やIT分野における米国の優位性を背景に欧州の地盤沈下が進むのを阻止し、経済・技術面での主導権を獲得する狙いで、産業の「強化」と「保護」を政策の2本柱としている。

今回のマニフェストはこれを独仏共同の取り組みへと引き上げるもので、産業・技術支援の具体的な分野としては電動車用電池セルを挙げた。電動車の価値の約40%を占める電池分野で欧州域外のメーカーに全面依存することは産業政策上好ましくないとみているためだ。

車載電池セルの分野では日韓中メーカーの競争力が高く、欧州メーカーは生産を行っていない。価格競争力が弱いことが最大のネックとなっている。独仏はこうした現状を改めるためにセル生産の欧州コンソーシアムを資金面で支援する意向をすでに打ち出している。支援額はドイツが最大10億ユーロ、フランスが7億ユーロ。

両国はEU競争法の改正が必要とみる点でも意見が一致している。

欧州委員会は6日、独電機大手シーメンスと仏鉄道車両・設備大手アルストムの鉄道事業統合計画を承認しないと発表した。EU競争法を踏まえるとこの決定は妥当なものだったものの、アルトマイヤー経済相とル・メール経済・財務相はグローバルレベルの競争が激化する現状に見合っていないとの批判。EU競争法の改正に共同で取り組む意向を表明していた。

外資からの重要産業の保護は、先端技術を持つ欧州企業を中国資本が買いあさる現状に歯止めをかけることが狙い。ドイツでは産業用IoTで重要な役割を果たすロボット・自動化機器大手クーカを中国家電大手の美的集団が買収したことで、警戒感が一気に高まった。