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2019/3/6

総合 - ドイツ経済ニュース

ダイムラーとBMWが自動運転分野でも協業

この記事の要約

独高級車大手のダイムラーとBMWは2月28日、自動運転と先進運転支援システム(ADAS)を共同開発することで基本合意したと発表した。両社は情報通信技術を利用した移動サービス事業も合弁化することから、協力関係を拡大すること […]

独高級車大手のダイムラーとBMWは2月28日、自動運転と先進運転支援システム(ADAS)を共同開発することで基本合意したと発表した。両社は情報通信技術を利用した移動サービス事業も合弁化することから、協力関係を拡大することになる。

ダイムラーは現在、サプライヤー大手のボッシュと共同で自動運転技術を開発中。BMWもコンチネンタル、インテル、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)などと同分野の共同開発でアライアンスを形成している。両社ともこれら開発の成果を2020年代初頭にそれぞれの車両に投入する計画だ。

今回発表した提携はその次の第2世代の技術開発に照準を合わせたもの。第一弾として高速道路走行と駐車用の自動運転技術(米自動車技術協会=SAE=が定義する「レベル3」と「レベル4」)などを開発し、20年代半ばまでに実用化する考えだ。両社は高速道路でのより高度な自動運転技術と、市街地用の自動運転技術でも共同開発を行うことを協議する予定で、協力関係は長期化する見通しだ。

高級車市場でトップ争いを繰り広げる両社が手を結ぶ背景には、車両の電動・IoT化に向けた開発コストが膨らんでいるという問題がある。電動車、コネクテッドカー、自動運転車の技術開発を単独で行うことは財務的に不可能であることから、自動車各社は連携の動きを強めている。

自動運転のカギを握るアルゴリズムの開発でグーグルの子会社ウェイモが先行しているという問題も大きい。ウェイモの覇権を阻止するためには開発協業を通した技術革新の加速が必要不可欠となっており、独フォルクスワーゲン(VW)と米フォードも協業を検討している。

ドイツ勢の劣勢は鮮明

米カリフォルニア州車両管理局(DMV)が2月中旬に公表した最新の『自動運転解除レポート』をみると、各社の開発進捗状況が大まかながらみてとれる。同州で自動運転車の公道試験を行う企業は走行距離と自動運転を解除した回数の報告を義務づけられている。

同レポートによると、各社の昨年1年間の走行距離はBMWが41マイル、ダイムラーの乗用車ブランドであるメルセデスが約1,750マイルにとどまったのに対し、ウェイモは127万マイルとケタ違いの数値を記録した。投入車両数の差が反映された格好で、BMWの5台、メルセデスの4台に対し、ウェイモは111台を利用した。延べ走行距離が長ければ長いほど、自動運転技術の開発スピードも早まる。

自動運転車の制御をシステムから人間のドライバーに切り替えた頻度(システム解除回数)をみると、ウェイモの優位性が一段と鮮明になる。同社の走行1,000マイル当たりの解除回数は0.09回にとどまり、2位以下を大きく引き離しているのだ。

また、2位は米ゼネラル・モーターズ(0.19回)、3位は米スタートアップのズークス(0.52回)、4位は同ニューロ(0.97回)と上位4社を米企業が占める。その後は中国のスタートアップ小馬智行(0.98回)、日産自動車(4.75回)、中国IT大手の百度(4.86回)と日中勢が続く。

一方、BMWは219.51回、メルセデスは682.52回と極めて多く、ウェイモは雲の上の存在だ。システム解除回数は交通事情が単純な道路を走行すれば少なくなり、複雑な道路を走行すれば多くなるという事情があるため、DMVの数値だけでは技術の優劣を正確に評価できないものの、ドイツ勢の遅れは鮮明だ。中国企業が国の支援を受けて技術力を急速に高めていることもあり、ダイムラーとBMWは開発競争から取り残されないために手を結ばざるを得ない状況にある。

両社はコスト削減と開発加速効果を一段と高めるために、自動運転技術開発の提携企業を増やしたい考えだ。このため両社を軸に幅広いアライアンスが形成される可能性もある。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が2社の関係者の情報として報じたところによると、BMWはVWのヘルベルト・ディース社長に参加を促しているという。