独連邦ネットワーク庁(BNetzA)は7日、電気通信のセキュリティ基準強化原案を発表した。中国の通信設備・端末メーカー、華為技術が製品に組み込んだ部品などを通してスパイ活動を行っているとの批判が世界的に高まっていることを踏まえた内容。今後、通信設備メーカーや通信業界団体の意見を聴取したうえで、今春中に最終案を策定する予定だ。
今回公表した原案には◇通信システムは国のセキュリティ基準、通信の秘密とデータ保護に関する規定を疑念の余地なく満たしたサプライヤーからのみ調達する◇セキュリティの上で重要なネットワークとシステムの部品(重要中核部品)は連邦情報技術セキュリティ庁(BSI)の認証を受けた技術監査機関の検査とBSIの認証を受けたもののみを利用する◇重要中核部品は信用できるサプライヤーからのみ調達する◇重要中核部品は納品時点で適切な検査を行うほか、セキュリティ上の問題がないかどうかを定期的・恒常的に検査する◇何が重要中核部品に当たるかはBNetzAとBDIが共同で定義する◇通信網を計画・構築する際は特定の1社の製品のみを使うことは避け複数メーカーの製品を利用する――などが記されている。
華為の製品を名指しで排除しておらず、同社は歓迎の意を示した。政府も華為を頭から締め出すことは回避する意向で、ペーター・アルトマイヤー経済相は同日、公共放送ZDFに特定の企業を排除することはないと明言した。同社製品の排除を決めたオーストラリアとニュージーランドは中国政府の報復を受けており、ドイツも同様の措置を実施すれば自国企業が大きな痛手を受けると予想されるという事情が背景にある。
ただ、セキュリティの具体的な基準設定を通して華為製品を事実用、締め出す可能性は現時点で排除できない。また、今回の原案にはセキュリティ上の懸念がないサプライヤーからの調達を義務付ける規定が盛り込まれていることから、中国の国家情報法で国の情報活動への協力を義務付けられている華為はこの規定に抵触する可能性がある。
一方、米政府は独政府に対し、通信ネットワークに華為製品を投入した場合、両国情報機関の協業を制限する意向を伝えた。米『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が報じたもので、独経済省はリチャード・グレネル駐独大使から書簡を受け取ったことを追認した。内容を検討したうえで近日中に回答するとしている。
在ドイツ米国大使館によると、グレネル大使はアルトマイヤー経済相に対し、信用の置けないメーカーの通信設備が同盟国で利用されると、機密性の高い情報が漏れる恐れがあり、情報機関間の緊密な協業がリスクにさらされることになると警告。そうした同盟国の情報機関とは協力を制限せざるを得ないと伝えた。