病気の被用者とは労使関係解除契約を締結できず

病気の被用者との間で労使関係を解除する契約(Aufhebungsvertrag)を締結することは違法であり、そうした契約を仮に締結しても労使関係は解除されない――。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が2月の判決(訴訟番号: 6 AZR 75/18)でそんな判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は清掃会社の被用者が雇用主を相手取って起こしたもの。同被用者は2016年2月15日、自宅を訪ねてきた雇用主の夫との間で労使関係解除契約を締結し、労使関係を退職金の受給なしで即日解除することを取り決めた。だが、原告はその後、同契約の締結日は病気を患っていたと主張。勘違いおよび雇用主の夫の脅しすかしの結果、契約を結んでしまったとして、その無効確認を求めて提訴した。裁判では、事務所外で締結した契約を消費者は撤回できるとした民法典(BGB)312g条1項の規定を根拠に、原告の自宅で締結した労使関係解除契約を解約できることも主張した。

二審のニーダーザクセン州労働裁判所は原告の訴えを棄却。一方、最終審のBAGは二審の審理は不十分として、裁判を同州労裁に差し戻した。

判決理由でBAGの裁判官はまず、BGB312g条1項に基づき解約を主張する原告の言い分を退けた。被用者は消費者に該当するものの、立法者の意思によりBGB312g条1項の規定は労使契約解除契約に適用されないと指摘。この点については二審判決に誤りはないと言い渡した。

そのうえで、労使関係解除契約が公正な話し合いのすえに締結されたかどうかを二審は吟味しなかったと指摘。契約当事者の一方が心理的な圧力状況を作り出し、熟考に基づく相手側の自由な決定を著しく困難にした場合は公正な話し合いとは言えず、契約は無効になるとの判断を示した。病気による原告の衰弱を意図的に利用したのであれば、まさに公正さを欠いており、被告は原告に損害賠償を支払わねばならないとの判断も付け加えた。

二審のニーダーザクセン州労裁はBAGのこの判断に基づいて判決を下すことになる。被告が不公正な態度で話し合いを行った事実が確定すると、労使関係解除契約は無効となり、労使関係は継続されることになる。

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