派遣社員の労災に関する事業所委の権限で最高裁が判断

雇用主は労災防止に関するあらゆる問題および労災調査に、従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)を関与させなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)89条2項に記されたルールである。この問題に絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が12日に決定(訴訟番号:1 ABR 48/17)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は運送会社の事業所委員会が同社を相手取って起こしたもの。同社の配送センターでは2016年1月25日と2月18日に事故が起こり、派遣社員2人が怪我をした。これを受けて事業所委は雇用主に対し(1)労災機関に提出する労災報告書のコピーの提示(2)労災報告書に同委が連署するとともに、同報告書の控えを同委に渡すこと(3)派遣社員など外部の人材の労災が今後、発生した場合は情報を提供すること――の3点を要求した。

これに対し雇用主は、外部の人材の労災では労災報告書を作成する義務がないとして拒否したことから、原告の事業所委は提訴した。

原告は一審、二審で敗訴したものの、最終審のBAGでは部分勝訴を勝ち取った。決定理由でBAGの裁判官は、労災防止に事業所委員会を関与させなければならないとしたBetrVG89条2項の規定を根拠に、事業所委には労災について知る権利があると指摘。職場で怪我をしたのが外部の人材であっても、その情報を得ることで事業所委は自らが責任を負う自社社員の労災防止に役立つ認識を得ることができると言い渡した。

一方、(1)と(2)については、原告事業所委は外部の人材に対し責任を負っていないとして、訴えを退けた。

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