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2019/3/27

総合 - ドイツ経済ニュース

成長率予測を約半分の0.8%に引き下げ=5賢人委

この記事の要約

政府の経済諮問委員会(通称:5賢人委員会)は19日、メルケル首相に提出した春季経済予測で、2019年の実質国内総生産(GDP)成長率(物価調整値)を従来予測の1.5%から0.8%へと大幅に引き下げた。従来予測は昨年11月 […]

政府の経済諮問委員会(通称:5賢人委員会)は19日、メルケル首相に提出した春季経済予測で、2019年の実質国内総生産(GDP)成長率(物価調整値)を従来予測の1.5%から0.8%へと大幅に引き下げた。従来予測は昨年11月に提示したもの。そのわずか4カ月後に大幅な下方修正を行ったのは世界経済の減速で輸出が鈍化しているほか、18年第4四半期(10~12月)のGDPが振るわなかったためだ。今回の予測は英国が新協定を締結して欧州連合(EU)から離脱することや、米国と中国、EUの通商摩擦が悪化しないことを前提としており、状況次第では大幅に下振れするリスクがある。同委は景気後退(リセッション)入りの可能性を排除していない。

18年第4四半期のGDPは物価・季節要因・営業日数調整後の実質で前期比横ばいにとどまった。GDP成長率に対する項目別の寄与度は外需(輸出-輸入)と内需がともに0ポイント。内需ではEUの排ガス検査方式変更を背景とする自動車業界の生産減と、河川の水位低下に伴う化学業界の生産減が響いた。

第4四半期がゼロ成長となったことで、19年成長率予測の下方修正が避けられなくなった。従来予測は同四半期のプラス成長を前提としていたためだ。

5賢人委は18年第4四半期がプラス成長になる結果、19年第1四半期(1~3月)から第4四半期まで仮にゼロ成長が続いても19年全体の成長率は0.5%になると予想していた。だが、実際には18年第4四半期がゼロ成長となったことから、19年第1四半期以降もゼロ成長が続くと同年全体の成長率は0.0%となることが確定した。

同委は世界全体の19年成長率も従来予測の2.9%から2.4%へと引き下げた。輸出大国ドイツは世界経済に強く依存していることから、これに伴い輸出成長率予測を3.0%から1.9%へと大幅に下方修正。輸出見通しと企業の先行き懸念の強まりを踏まえ、設備投資の増加幅も2.5%から1.6%へと引き下げた。GDPを構成する主要項目で上方修正したのは建設投資(0.8ポイント増の3.3%)だけだ。(下の表を参照)

物価に占める比重が大きい石油価格が下落していることから、インフレ率も従来の2.1%から1.5%へと下方修正した。石油価格は昨年10月からこれまでに25%低下している。

5賢人委は英国のEU離脱については、離脱が起きるのかどうか、起きるとすればいつのなか、またどんな形となるのかを全く予想できないとして、「合意なき離脱」が起きないことを前提に今回の予測を作成した。合意なき離脱に陥った場合は独経済が大きな痛手を受けることから、GDP予測の引き下げが避けられなくなる。このほか、通商摩擦の激化や中国経済の予想を上回る減速といったリスクもあることから、世界経済低迷と保護主義の負のスパイラルでドイツ経済はリセッションへと陥る恐れもあると注意を促している。