すべての被用者には年次有給休暇の取得権がある。これは有給休暇法(BUrlG)1条に記された権利である。有給休暇日数は週6日勤務で24日、同5日で20日、同4日で16日となっている(同3条)。週当たり1日の勤務で年4日の有給が与えられる計算だ。
一方、育児休暇法(BEEG)17条1項第1文には、育児休暇中の有給休暇を雇用主は1カ月につき12分の1削減することができると記されている。つまり、被用者が育休を1年間、取得した場合、雇用主は有給休暇を一切、与えないことができるのである。このBEEG17条1項第1文とすべての被用者に有給休暇の取得権を認めたBUrlG1条の規定を巡り最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が19日に判決を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は被告企業に2001年から勤務していた社員が起こしたもの。年次有給休暇は30日で、法定の有給休暇よりも長かった。
同社員は13年1月1日から15年12月15日までの3年弱、育休を取得した。16年3月23日付の文書で6月末付の退職を通告した際、育休中に消化しなかった有給が89.5日残っていると主張。退職日までの期間を未消化の有給休暇の消化に充てることを申請した。被告企業がこれを認めなかったことから、原告は提訴した。
一審と二審はともに原告の訴えを棄却。最終審のBAGでも判決は覆らなかった。判決理由でBAGの裁判官は、雇用主はBEEG17条1項第1文で認められた有給休暇の削減権を行使する意向を当該被用者に伝えれば、有給休暇の取得申請を却下できるとの判断を示した。この権利は特別な取り決めがない限り、法定の有給休暇に上乗せする形で被用者に与えられている有給休暇にも適用されるとしている。
裁判官はまた、BEEG17条1項第1文の有給休暇削減権は欧州連合(EU)法に抵触しないとの判断も示した。その根拠として、育児休暇の取得期間中に勤務しなかった被用者を、同期間中に勤務した被用者と同等に扱うことをEU法は要求していないとした、EU司法裁判所(ECJ)の昨年10月の判決(訴訟番号:C-12/17)を挙げた。