フォルクスワーゲン―産業用クラウドをアマゾンと共同構築―

自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)グループ(ヴォルフスブルク)は3月27日、産業用クラウドを米IT大手アマゾンと共同構築すると発表した。工場の生産性を大幅に引き上げることが狙い。将来的にはサプライヤー網も同クラウドに統合する意向だ。工場の機械などの統合は電機大手の独シーメンスが担当する。

VWは先ごろ、工場の生産性を2025年までに30%引き上げる方針を打ち出した。競争力と収益力の強化に向けた措置の一環。自動車業界では開発コストの膨張や他業界からの競合参入など事業環境が厳しさを増しており、ヘルベルト・ディース社長は「生存競争」を生き残れるかどうかは自明でないと危機感を持っている。

VWの工場は世界全体で計122カ所に上る。各工場では現在、それぞれが独自のソフトシステムを採用していることから、ヴォルフスブルク本社が各工場の出荷や組み立てラインの状況をリアルタイムで把握できないという問題を抱えている。

同社はアマゾンと共同で産業用クラウド「フォルクスワーゲン・インダストリアル・クラウド」を立ち上げることで全工場をネットワーク化し、一元管理体制を確立。すべての機械、設備、システムの情報をリアルタイムで把握して生産工程を最適化し、生産性を引き上げていく。

長期的には1,500社を超えるサプライヤー・提携先の拠点、合わせて3万カ所も同クラウドに統合してパートナーネットワークを構築。関与企業が同ネットワークのデータベースと情報を利用できるようにする。

同クラウドはオープンプラットホームとし、原則的に他の自動車メーカーもアクセスできるようにする。これにより世界的な産業エコシステムを作り出す考えだ。

ディース社長は先ごろ、アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)とのセルフィー(自撮り写真)をビジネス特化型SNSのリンクトインで公開した。「共同で未来を形作っていけることをうれしく思う」とのコメントを添えており、両社が何らかの取り決めを行ったことを示唆していた。

VWは29日、米アマゾンと共同構築する産業用クラウドの統合パートナーをシーメンスが引き受けることを明らかにした。シーメンスはVWの各工場で用いる様々なメーカー製の機械、設備をクラウド上でネットワーク化し、これらの機器が生み出す全データを分析できるようにする。

シーメンスは自社開発のオープンIoTプラットホーム「マインドスフィア」を用いてVW工場のネットワーク化を支援。VWとサプライヤー、機械メーカーがデータを有効に活用できるようにする。これにより生産の効率・柔軟性が高まり、生産性が向上する。

VWとシーメンスは将来的に、機械・設備メーカーと共同で新しい機能・サービスを開発し、VW産業クラウドの参加企業に提供する考えだ。

上部へスクロール