自動車大手の独ダイムラー(シュツットガルト)は3月28日、超小型乗用車ブランド「スマート」を筆頭株主である中国同業・浙江吉利控股集団との合弁会社へと改めることで両社が合意したと発表した。スマート事業は乗用車部門の足かせとなっていることから、合弁化することでリスクを軽減。また、巨大市場である中国に生産を移管することで需要を掘り起こす考えだ。
折半出資の合弁会社を年内に設立する。出資額は非公開。中国に専用工場を建設して次世代スマートを生産し、2022年から世界で販売していく。合弁会社および新工場の設置場所は明らかにしていない。
スマートは20年からすべてのモデルを電気自動車(EV)とすることが決まっている。中国生産の次世代モデルもEVを計画。これまでのAセグメント車(全長375センチ以下)のほか、新たにワンサイズ上のBセグメント車(全長375~420センチ)も投入する意向だ。
中国は世界最大の自動車市場であるうえ、流行に敏感な富裕な若者の間でスマートがセカンドカーとして高い人気を誇っており、ダイムラーは中国に軸足を移すことで業績が好転すると判断したもようだ。
スマートは現在、仏東部のハンバッハ工場(2人乗りモデル「フォートゥー」)とスロベニアのノヴォ・メスト工場(4人乗りモデル「フォーフォー」)で生産している。中国への生産移管に伴いハンバッハ工場の生産車種はメルセデスの小型電動車へと切り替えられる。
スマートはスイス時計大手スウォッチのニコラス・ハイエク社長(当時)とダイムラーが立ち上げた都市型乗用車ブランドで、1998年にダイムラーの完全子会社となった。業績不振でこれまでに何度も事業の再編を行ってきたが、十分な成果は出ていない。
吉利は昨年2月、ダイムラーとの包括提携を目指して同社株9.69%を取得し筆頭株主となった。だがダイムラーは、吉利との協業はすでに戦略提携を結んでいる北京汽車(BAIC)の同意が前提になると強調。3社の利害が一致しなければ吉利との協業はあり得ないとして、吉利との協業に消極的な姿勢を示していた。
吉利はそれでもダイムラーとの協業を強く要求。両社は10月に、配車サービスの合弁会社を中国に共同設立することで基本合意した。今回の合意は協業の第二弾となる。