自動車部品大手の独ZFフリードリヒスハーフェンは3月28日、米蘭資本の同業WABCOを買収することで合意したと発表した。商用車ブレーキ分野の事業を獲得することで、乗用車だけでなく商用車分野でも総合的なソリューションを提供できるようにする狙い。自動運転技術の利用が今後、拡大していくことを見据えて買収を決めた。
株式公開買い付け(TOB)でWABCOを買収する。1株当たりの買い付け価格は136.50ドル。総額は最大で約70億ドルに達し、2015年の米TRWオートモーティブ取得(96億ユーロ)以来の大型買収となる。株式50%超の確保と認可当局の承認を経て買収手続きが来年初頭に完了すると見込んでいる。
WABCOは商用車向けブレーキや車両制御、自動トランスミッション・システムの有力メーカーで、昨年の売上高は33億ユーロに上った。世界40カ国で事業を展開。従業員数は1万6,000人に上る。
ZFは乗用車と商用車の両分野で総合的なソリューションを提供できるようになることを目指している。乗用車部門ではすでのこの目標を達成しているものの、商用車分野ではブレーキのノウハウを持っていなかった。このため16年にはスウェーデンの商用車用ブレーキメーカー、ハルデックスをTOBで買収しようとしたが、独ブレーキ大手のクノールブレムゼが横やりを入れたため、とん挫していた。
ZFはプレスリリースで、自動運転では車両が「見る(認知)」「考える(判断)」「行動する(実行)」の3分野でスムーズに連動することが必要になるとしたうえで、同社はすでに認知と判断を司るセンサーとコンピューターの分野で技術を持っていると指摘。WABCOを傘下に収めると商用車の実行分野のポートフォリオを獲得できると説明し、今回の買収の意義を強調した。商用車向け事業が強化されることから、乗用車産業の景気が低迷した際の影響をこれまでよりも小さく抑えられるようになることもメリットだとしている。
ZFの売上高は今回の買収により約400億ユーロへと拡大。競合ボッシュ(470億ユーロ)、コンチネンタル(450億ユーロ)との差が狭まる。