欧州連合(EU)の欧州議会は3月26日の本会議で、加盟国が一律に採用してきたサマータイム(夏時間)制度を廃止する案を賛成多数で可決した。ただ、加盟国間の調整に時間がかかることから、廃止時期は欧州委員会が提案していた2019年から21年に先送りする。
EUでは3月の最終日曜日に時計を1時間進めて夏時間とし、10月の最終日曜日に標準時間(冬時間)に戻すサマータイム制度を採用している。しかし、このところ省エネ効果が乏しいうえ、高齢者や子どもの健康への影響も指摘されていることから廃止論が高まっていた。
これを受けて欧州委員会のユンケル委員長は昨年9月、欧州議会で行った一般教書演説で、夏時間制度を19年に廃止することを正式に提案した。廃止には加盟国と欧州議会の承認が必要となる。
同案は「夏時間」と「冬時間」のどちらを通年で適用する「標準時間」に設定するかの判断を加盟国に委ねるというもの。各国は夏時間制度が廃止される年の3月最終日曜日に夏時間に切り替えたうえで、冬時間を標準時間として採用する国は10月の最終日曜日に時間を戻し、夏時間を採用する国はそのまま継続することになる。
しかし、この廃止案には隣接する国がそれぞれ異なる標準時間を選んだ場合、域内のタイムゾーンが複雑になるといった弊害がある。
このため、昨年10月に開かれた加盟国の閣僚理事会では、19年の廃止は時期尚早との声が噴出。当時の議長国だったオーストリアが廃止を21年まで延期するよう提案していた。
欧州議会は夏時間廃止そのものについては支持したものの、域内で標準時間帯が「パッチワーク状」になる事態を避けるため、加盟国間の調整が必要として、2年先送りする案を可決した。同案は加盟国と欧州議会が調整を進めたうえで正式成立となる。