被用者の懲戒に向けた手続きの一環で雇用主が当該被用者から事情を聴取する面談に、事業所委員会(Betriebsrat)の委員が参加すれば、被用者にとって心強いことであろう。事業所委員は被用者の利害を代表する者として選出された同じ職場の仲間であるわけだから、不利になることはまずない。だが、懲戒手続きの本人面談に事業所委員を同席させるルールを導入している企業は見直す必要があるかもしれない。そうしたルールを制限する判断を最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年12月の決定(訴訟番号:1 ABR 12/17)で下したからである。
裁判は職業リハビリテーション機関(BFW)の事業所委員会が雇用主を相手取って起こしたもの。同BFWでは懲戒手続きの本人面談に事業所委員を同席させることが事業所内のルールとして採用されていた。だが、被告はこのルールが懲戒手続きの対象となる被用者の人格権の侵害に当たると判断。今後は手続きの対象者が希望した場合にのみ事業所委員を面談に参加させることを2015年10月、事業所委員会に伝えた。同委はこれを不当として提訴した。
原告は二審で勝訴したものの、最終審のBAGで逆転敗訴した。決定理由でBAGの裁判官は、懲戒手続きの本人面談に事業所委員の参加を義務付けるルールは、人格権を保障した基本法(GG)2条、および職場における被用者の人格の自由な展開を保護・促進することを雇用主と事業所委員会に義務付けた事業所体制法(BetrVG)75条2項の規定に抵触すると指摘。懲戒手続きの対象となる被用者には◇本人面談に事業所委員が参加するかどうか◇参加するとすればどの委員が参加するか――を自ら決定する権利が保障されなければならないとの判断を示した。