道路の上部に設置した電線から電力の供給を受けて走行する架線給電ハイブリッドトラックの実用テストが7日、フランクフルト近郊のアウトバーン(高速道路)でスタートした。同トラックの実用テストがドイツで行われるのは初めて。経済省は全国のアウトバーンに給電インフラを敷設することを視野に入れており、実用テストで成果が上がれば現実味を帯びてきそうだ。
アウトバーンA5号線のランゲン/メールフェルデン~ヴァイターシュタット間に必要なインフラを設置した。同区間の距離は約10キロ。インフラはシーメンスが請け負った。
商用車大手スカニアが開発した専用トラックを用いて2022年末までテストを実施する。同車両は架線から電力の供給を受けて走行。電力供給を受けられない区間では動力源が軽油に切り替わる。これによりエネルギー消費量と有害ガスの排出量を軽減できる。
架線給電ハイブリッドトラックを運用するのは運送会社4社と小売大手レーベ、製薬・化学大手メルクの計6社。技術パートナーとして地元ダルムシュタット工科大学が参加する。
ドイツではこのほか、北部のラインフェルト(A1号線)と西南部のラシュタット(国道B462号線)でも架線給電ハイブリッドトラックの実用テストが行われる。
大型トラックはドイツの道路交通部門が排出する二酸化炭素(CO2)全体の3分の1を占める。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、架線給電インフラが十分な規模のCO2排出削減効果を発揮するためには敷設距離で延べ4,000キロが必要になる。これはドイツのアウトバーン網の3分の1に当たる長さで、投資総額は今後10年間で100億~120億ユーロに上る見通しという。
架線給電ハイブリッドトラックに対しては、効果に否定的な意見もある。ドイツがインフラを整備しても周辺諸国が追随しなければ国境を越えた物流での利用が進まず、CO2排出削減効果が制限されるためだ。ダイムラーはこうした事情を踏まえ、同トラックを開発しない意向を示している。