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ドイツ経済ニュース

シーメンスが火力発電部門を分離・上場、デジタル分野に集中

この記事の要約

電機大手の独シーメンスは7日、組織再編計画を発表した。昨秋に打ち出した長期経営戦略「ビジョン2020+」に修正を加えるもので、火力発電設備などを手がけるエネルギー部門「ガス・アンド・パワー(GP)」を分離したうえで上場。 […]

電機大手の独シーメンスは7日、組織再編計画を発表した。昨秋に打ち出した長期経営戦略「ビジョン2020+」に修正を加えるもので、火力発電設備などを手がけるエネルギー部門「ガス・アンド・パワー(GP)」を分離したうえで上場。中核事業をデジタル分野へと絞り込む。事業効率の向上や本社機能の分散化、人員整理を通してコストを大幅に削減することも明らかにした。

同社は昨年9月に発表したビジョン2020+で、事業部門を分社化しカンパニー制へと全面移行する方針を打ち出した。デジタル化の進展を背景に急速に変化する時代を生き残るには柔軟性を高める必要があると判断したためで、既存と新設の各カンパニーに大きな裁量を与えて成長を加速する狙いだ。

同戦略では事業を100%傘下の「事業会社(オペレーティング・カンパニー)」と出資比率が100%未満の連結子会社「戦略会社」へと再編する。当初の計画ではGPと「スマート・インフラ(SI)」「デジタル・インダストリー(DI)」の3部門を事業会社化、医療機器子会社のシーメンス・ヘルシニアーズ、風力発電設備子会社のシーメンス・ガメサ、および仏アルストムと共同設立する鉄道車両・設備合弁シーメンス・アルストムの3社を戦略会社とすることになっていた。

だが、GPは火力発電設備需要の世界的な縮小を受けて業績が悪化。再生可能エネルギーの利用拡大を背景に市場好転の見通しも立たないことから、シーメンスはGPの分離を決めた。保有するシーメンス・ガメサ株59%をGPへと移管したうえで、来年9月までにGPの新規株式公開(IPO)を実施する。IPOの時点でGPの過半数株をシーメンス株主に配当として提供し、シーメンス・ガメサとともに連結対象から除外する。ただ、GPに対しては金融サービス、販売網、「シーメンス」ブランドの使用許可などを通してIPO後も支援を行っていく考えで、重要決議の拒否権を行使できる25%+1株以上の出資比率を当面、維持する方針だ。

シーメンス・ガメサがGPの傘下に組み込まれることから、シーメンスの戦略会社はシーメンス・ヘルシニアーズと鉄道車両・設備部門の2社に減ることになる。また、鉄道車両・設備部門をアルストムと合弁化する計画は欧州連合(EU)欧州委員会の承認を得られなかったことから、合併を通した同部門の拡大はとん挫した。

「シーメンスのDNAにメス」=社長

シーメンスは今回、中核部門(事業会社)の売上高営業利益率(EBITAベース、調整済み)を長期的に14~18%に引き上げる目標を打ち出した。

SIではアジア事業を強化するとともに、サービス事業を拡大する。また、電動車用インフラ、分散型エネルギーシステム、スマートビルディング、蓄電など将来性の高い分野でデジタル技術を積極的に活用した事業を展開。すべての事業分野で売上高を年4~5%拡大していき、売上高営業利益率を2023年までに13~15%へと引き上げる。

製造業のデジタル化(インダストリー4.0)に取り組むDIでは市場よりも25%速いスピードで事業を拡大し、世界最大手としての地位を強化。売上高営業利益率を23年までに17~23%へと引き上げる。

管理などの本社機能は分散化し、大幅にスリム化する。これに伴い同分野の従業員1万2,500人のうち2,500人を23年までに整理する。

シーメンスはこれら一連の措置を通して同年までにコストを約22億ユーロ圧縮する目標だ。グループ全体で計1万400人を削減するものの、2万500人を新規採用することから、雇用規模は差し引きで約1万人拡大する。

シーメンスは1989年に電子部品部門を松下電器産業(現パナソニック)との合弁会社に移管したのを皮切りに事業の整理を開始。99年には同合弁の社名をエプコス(08年にTDKが買収)へと改めたうえでIPOを実施したほか、半導体部門をインフィニオンとして分離した。その後も通信機器、自動車部品、白物家電など多くの事業から撤退し、選択と集中を進めてきた(表を参照)。

シーメンスはGP部門を分離することで、中核事業を産業分野のIoTへと絞り込み、同社の特徴であった複合企業体制から最終的に決別する。戦略会社2社の過半数株を手放す考えは現時点でないものの、出資比率を50%未満に引き下げることは原則的にいつでも可能だ。

火力発電はシーメンスの最も古い事業の一つで、同社の看板でもあった。この事業からの決別についてジョー・ケーザー社長は「シーメンスのDNAにメスを入れた」と発言。一貫して同社でキャリアを積んできた者として「難しい決断だった」と複雑な胸の内を明かした。その一方で、急速な変化の時代を生き残るためには集中と柔軟性、スピード感が必要だと述べ、重要なのは事業の規模でなく他社に先駆けて変化に適応する能力だとの見解を表明した。

自動車部品のほか産業機器、家電、暖房機器、ビルテクノロジーなど幅広い事業を手がける独ボッシュも近年、自らをIoT企業と位置づけており、デジタル化の進展は伝統ある企業のあり方を大きく変え始めている。