従業員を対象にアンケートを実施する企業が増えている。仕事に対する満足度などを把握するためだが、そうしたアンケートを行うためには被用者の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)の承認を得る必要があるのだろうか。この問題に絡んだ係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年12月に決定(訴訟番号:1 ABR 13/17)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は物流企業の事業所委員会が同社を相手取って起こしたもの。同社では上司と役員に対する満足度を調べるために2007年から毎年、オンラインアンケート調査を実施していた。調査への参加はあくまで任意であり、回答者の匿名性も確保されるよう配慮されていた。
同調査の実施に際しては事業所委の同意を取っていたものの、15年のアンケートでは同委の同意を得た質問項目に一部、変更を加えた。変更内容については事業所委の同意を得なかったことから、同委は事業所体制法(BetrVG)で保障された共同決定権(Mitbestimmungsrecht)の侵害に当たるとして提訴した。
原告の事業所委員会は2審で敗訴し最終審のBAGでも決定は覆らなかった。決定理由でBAGの裁判官はまず、オンライン社員アンケート調査の実施には事業所委員会の同意が必要だとの判断を示した。その根拠として挙げたのは、被用者の行動ないし仕事を監視するための機器を投入する場合は事業所委の同意を得なければならないとしたBetrVG87条1項6の規定だ。ITシステムを用いるオンラインアンケートでは、従業員の行動・仕事が監視される可能性を排除できないと判断したためである。
裁判官はこの判断を提示したうえで、事業所委員会の同意を受けたアンケート内容に変更を加えることについては事業所委の同意を得る必要がないとの判断を示した。これについてはアンケートがあくまで任意であるうえ、匿名性が確保されていることを指摘。質問内容の変更は、事業所内での被用者の行動にかかわる問題は事業所委の共同決定権の対象であるとしたBetrVG87条1項1の規定に該当せず、同委の承認は不要だと言い渡した。
裁判官はさらに、従業員アンケートは事業所委員会の同意を必要とするとしたBetrVG94条1項との関係でも判断を提示。事業所委の同意を必要要件とするアンケートは参加(回答)が義務付けられているものに限るとして、任意参加で行った被告企業のアンケートはこれに当たらず、事業所委の同意は必要でないと言い渡した。