独新興企業がロケット大手アリアンと協業

宇宙開発のスタートアップ企業である独PTサイエンティスツは8日、欧州ロケット大手アリアン・グループと協業すると発表した。外部の機関・企業の月面探索を支援する。PTサイエンティスツはすでに、宇宙輸送サービスの米スペースXのロケット「ファルコン9」を利用して欧州初の月着陸船と探査機を打ち上げることになっている。アリアンとの協業は100%欧州勢によるもので、創業者のロベルト・ベーメ社長は「月への輸送を低コストで提供する」ことに意欲を示した。

PTサイエンティスツとアリアンは1月、月の表土(レゴリス)から水と酸素を獲得する「現地資源活用(ISRU)」の調査を共同実施することを明らかにした。ISRUは人類が宇宙で継続的に生活するための前提となるもので、実現すれば月や太陽系の開発に道が開けることになる。

両社は今回、欧州宇宙機関(ESA)が計画するISRUプロジェクトと将来の月探査を支援することを取り決めた。月輸送ではアリアンがロケット、PTサイエンティスツが着陸船を提供する。PTサイエンティスツの着陸船「アリナ(ALINA)」は積載能力が300キロに上る。

PTサイエンティスツはファルコン9を利用してアリナと同社の探索機「アウディ・ルーナー・クアトロ」を2021年に月へと送り込む計画。独自動車大手のアウディは車両の開発で協力した。電気通信大手のボーダフォンは同探査機が撮影した高精細画像を地球に送信することになっている。1972年に米国が行った有人探査で月に置き去りにされた探査機を撮影することになっている。同計画は資金が不足しており、ベーメ社長はさらなる投資家を歓迎すると述べた。

PTサイエンティスツはベルリンに本社を置く企業で、従業員数は70人強。墺ザルツブルクと米ヒューストンにも事業拠点を置く。

上部へスクロール