石炭発電廃止でCO2排出増の恐れ

ドイツ政府の計画に従って2038年までに石炭火力発電が全面的に廃止されると、欧州の二酸化炭素(CO2)排出量は増加し、温暖化防止という所期の目的に逆行する恐れがある――。ポツダム気候研究所(PIK)は4日、こんなレポートを発表した。

政府の諮問委員会(石炭委員会)は1月、天然ガス発電など他の火力発電に比べてCO2排出量が多い石炭発電を、遅くとも2038年までに全廃することを提言した。政府はこれに基づいて政策の具体化に乗り出しており、ドイツは原子力と石炭発電を世界で初めてともに廃止する国となる見通しだ。

だが、政府の狙いとは裏腹に、ドイツが石炭発電の廃止に単独で踏み切ると、欧州のCO2排出量は増加しかねないとPIKは指摘する。それによると、稼働を停止する石炭発電所が増えて電力供給が減少する結果、電力価格が上昇。石炭発電の採算が取りやすくなることから、欧州全体では石炭発電の量が増えCO2の排出増につながる。

ドイツの石炭発電全廃は欧州のCO2排出量取引市場で需要の減少と排出枠価格の低下ももたらすことから、発電事業者は排出枠を購入しやすくなる。この事情も石炭発電の増加をもたらす恐れがある。

上部へスクロール