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2019/7/10

総合 - ドイツ経済ニュース

Deutsche Bank:ドイツ銀史上最大の人員削減、「原点回帰」へ

この記事の要約

独銀最大手のドイツ銀行は7日、大規模な組織再編計画を発表した。企業顧客を対象とする部門を新設するとともに、株式取引事業から撤退するなどして業績の足かせとなっている投資銀行部門を縮小。コストを大幅に削減し、安定的に利益を稼 […]

独銀最大手のドイツ銀行は7日、大規模な組織再編計画を発表した。企業顧客を対象とする部門を新設するとともに、株式取引事業から撤退するなどして業績の足かせとなっている投資銀行部門を縮小。コストを大幅に削減し、安定的に利益を稼げる体制を構築する。クリスティアン・ゼーヴィング頭取は「わが行を再び顧客に照準を合わせた銀行とすることで、原点に回帰する」と述べるとともに、リーマンショック後の10年間で失われた信用を、構造改革の実行を通して回復することに意欲を示した。組織再編に伴い149年に上る同行史上で最大の人員削減を行う。

ドイツ銀は戦後の経済発展を、企業融資などを通して支えてきた。ドイツ企業らしく手堅い経営が強みの根幹にあった。

同行を現在、苛む危機は1989年の英モルガン・グレンフェル銀行、99年の米バンカーズ・トラスト買収を通して投資銀行事業に本格参入したことに起因する。

投資銀行事業は融資を基調とする商業銀行事業に比べ収益力が高く、2000年代後半の途中まではドイツ銀の業績のけん引車として「君臨」していた。一時はドイツ銀が事業を投資銀分野に絞り込むとの観測も出たほどだ。

だが、2008年秋のリーマンショックをきっかけに世界的な金融・経済危機が発生すると、住宅ローン担保証券(RMBS)の不正販売や、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作などコンプライアンス(法令遵守)上の問題が表面化。また、資産の評価損も発生し、同行は巨額の引当金計上を余儀なくされた。

金融・経済危機を受けて市場に大きなリスクをもたらす業務の自己資本規制が強化され、株式などの有価証券事業を取り巻く環境が悪化したにもかかわらず、これらの事業に固執したことも響いた。

ドイツ銀は投資銀行部門が業績の足かせへと転落した後も、同部門の行員をつなぎとめるために莫大な額のボーナスを支給してきた。同部門の行員を主な対象として同行が12~18年に支給したボーナスの総額は170億ユーロに達する。この間の最終損益は59億ユーロの赤字であり、株主の堪忍袋の緒は切れていた。

再編費ねん出で2年間は無配に

こうした状況に幕を引くために、投資銀部門を縮小する。株式取引事業を仏BNPパリバに売却するほか、デリバティブ取引事業を縮小。リスクの高い資産を圧縮する。今後は資金調達、コンサルティング、債券、外国為替事業に軸足を置く意向だ。金融機関の健全性を図る指標である有形自己資本利益率(RoTE)を18年の2%から22年までに6%超へと引き上げることを投資銀行部門で目指す。

「原点回帰」に向けてはまた、これまで投資銀部門で展開してきた大企業向け事業と、リテール部門で展開してきた中堅以下の企業向け事業を新設の「コーポレートバンク」部門へと統合する。同部門にはドイツ銀に統合予定のリテール子会社ポストバンクの企業顧客事業も組み入れる意向だ。コーポレートバンク部門のRoTEは昨年の9%から22年に15%超へと引き上げる。

リテール部門は顧客を個人と小規模企業に絞り込む。コストを22年までに16億ユーロ削減。これと並行して事業のデジタル化を進め、RoTEを18年の5%から12%超へと拡大する。

資産運用部門DWSでは世界市場10位入りを目指す。RoTEは18%から20%超へと引き上げる。

ドイツ銀は「キャピタル・リリース・ユニット(CRU)」という不良資産の受け皿機関(バッドバンク)も設置する。CRUでは損失の発生を可能な限り抑制しながら不良資産を処理していく。

組織再編によりフルタイム勤務の行員を22年までに1万8,000人(20%)削減し7万4,000人とする。

これらの措置で同年までに約74億ユーロのコストが発生する見通しだ。同行はこのうち51億ユーロを19年12月期に計上するため、同期の税引き後損益は赤字へと転落する。ジェームズ・フォンモルトケ取締役(財務担当)は8日、20年12月期は収支トントンか少額の利益計上を予想していることを明らかにした。

組織再編の費用は自らねん出する方針で、増資は行わない。このため19年12月期と20年12月期は配当を見送る意向だ。22年には利益を60億ユーロ以上、確保。配当と自社株買いを通してそのうち50億ユーロを株主に還元する。

組織再編コストは狭義の中核自己資本比率(CET1比率)も圧迫する見通しで、現在の13.7%から低下する。ドイツ銀は同12.5%を下回らないようにする意向を表明した。

一連の改革を通して中核事業の経常収益(売上高に相当)を22年までに18年の228億ユーロから約250億ユーロへと拡大するとともに、調整済みのコストを約60億ユーロ減の170億ユーロへと削減。同行のRoTE(税引き後利益ベース)を8%へと引き上げる。総資産に対する自己資本の比率であるレバレッジ比率については20年に4.5%、22年に約5%へと改善する。

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