被用者が勤務時間外に問題行動を起こしても、雇用主は原則として解雇することができない。ただし、ケースによっては解雇可能な場合もある――。そんな判断をニーダーザクセン州労働裁判所が3月の判決(訴訟番号:13
Sa
371/18)で示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は自動車大手フォルクスワーゲン(VW)に勤務する技術者が同社を相手取って起こしたもの。同技術者は2017年6月上旬、有給休暇でスペインのマヨルカ島に滞在していた。
同島のE市にあるディスコでは6月9日、極右とみられるドイツの若者の集団が、1921~33年に使用されていた軍旗(Reichskriegsflagge)に一部変更を加えた旗を広げる事件が起きた。原告技術者はその時間、その場に居た。
この事実をVWの地元紙などが報道。報道の中で原告がVWに勤務していることも報じられたことから、同社は休暇明けの19日、本人から事情を聴取したうえで、7月6日付の文書で即時解雇と、解雇予告期間を設定した通常解雇を通告した。差別撲滅や公共の場における従業員の行動を定めたVWの「行動規範」に抵触すると判断したためである(即時解雇に加えて通常解雇も通告したのは、即時解雇の無効が裁判で確定した場合でも解雇できるようにするため)。
原告は解雇を不当として提訴し、一審と二審でともに勝訴した。判決理由で二審のニーダーザクセン州労裁は、勤務時間外の問題行動を理由に被用者を解雇することはできないとの原則を確認したうえで、問題行動が業務運営に著しい悪影響をもたらす場合は即時解雇ないし通常解雇が可能だとの判断を示した。今回のケースに関してはそうした悪影響が具体的に証明されていないとして、VWによる解雇は無効だと言い渡した。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めなかった。