独最大与党キリスト教民主同盟(CDU)のアンネッテ・クランプカレンバウアー党首(56)は17日、国防相に就任した。欧州連合(EU)の欧州委員長への就任が決まったウルズラ・フォンデアライエン国防相(60)の後任。ドイツでは国防相を女性が2人続けて務めることになった。
フォンデアライエン国防相は2日のEU臨時首脳会議で次期欧州委員長に指名された。次期委員長は当初、5月の欧州議会選挙で最大会派となった中道右派・欧州人民党(EPP)が推すマンフレート・ウェーバー欧州議員(独出身)の指名が有力視されていたが、フランスのマクロン大統領が資質に欠けるとして反対したことから調整が難航。最終的に中道右派に属するフォンデアライエン氏が指名された。
この経緯に対しては欧州議会内から強い反発が出た。加盟国が最大会派の候補を欧州委員長に指名するという慣例を破り、欧州議会に属さないフォンデアライエン氏に白羽の矢を立てたためだ。欧州議会第2会派の社会民主進歩同盟(S&D)に属する独連立与党・社会民主党(SPD)はこれを強く批判し、16日の本議会で同人事案に反対票を投じる姿勢を打ち出していた。
フォンデアライエン氏はこうした事情を受けて、欧州議会が同人事案を仮に否決しても国防相を辞任する意向を本会議前日の15日に表明した。自ら退路を断つことで、同氏の指名に反発する欧州議会議員の支持を取り付ける狙いからだ。
フォンデアライエン氏の欧州委員長就任案は本会議で承認された。これを受けてドイツのメルケル首相(CDU前党首)とカレンバウアー党首は電話で協議。同党首が次期国防相に就任することを取り決めた。
カレンバウアー氏は昨年12月、CDUの党首に就任した。メルケル首相は21年秋までに引退する意向を表明しており、同党首は順調にいけば、次期連邦議会(下院)選挙でCDUと姉妹政党キリスト教社会同盟(CSU)の首相候補となる見通しだ。
これまではメルケル政権に入閣せず、政府方針に縛られない自由な立場で政治活動を行う意向を示していた。だが、政府を正面から攻撃してポイントを稼ぐ野党の党首と異なり、首相を輩出する与党の党首はそうした手法を取ることができず、カレンバウアー党首は有権者に自らをアピールできない状態が続いている。大臣になり政策を通して具体的な成果を出せば、政治手腕への評価を高められることから、入閣を決めたもようだ。