時代の変化とともに被用者に求められる能力も変わってくる。例えば事業が国際化すれば、英語を使いこなすことも業務の必須条件となる。では、そうした変化に対応できない社員を企業は解雇できるのだろうか。この問題を巡る係争でケルン州労働裁判所が3月の判決(訴訟番号:6
Sa
489/18)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は大手会計事務所の公認会計士が同社を相手取って起こしたもの。同社では組織再編の結果、英語を使いこなす能力の重要性が高まった。雇用主はこれを受けて、原告は業務遂行に必要な英語力を持っていないと判断。2018年1月16日付の文書で、3月末付の解雇を通告した。原告はこれを不当として、解雇無効の確認を求める裁判を起こした。
二審のケルン州労裁は原告勝訴判決を下した。判決理由で裁判官は、言語能力を理由に解雇できるのは、その言語が絶対に必要な場合に限られると指摘。原告の職場では社内公用語がドイツ語であり、英語は絶対に必要な言語とは言えないとの判断を示した。
また、原告は英語を使用する業務を問題なくこなしてきたとして、「業務遂行に必要な英語力を持っていない」とする被告の判断は正当でないとも言い渡した。
さらに、被告企業には組織再編後ももっぱらドイツ語で業務を行う会計業務があることを指摘。そうした業務を原告に割り振ることもなく、「英語を流ちょうに使いこなす社員だけを雇用したい」という雇用主の願望を理由に原告を解雇したことは不当だとの判断を示した。
最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めなかった。