ドイツ政府は環境に優しい移動手段の利用を促進するための法案を7月31日の閣議で了承した。電動車などの税優遇措置を拡大・延長する。年末までに法案を議会で成立させる意向だ。
政府は2009年、電動車の分野で世界の主導権を握るために、2020年までに100万台を普及させるという目標を設定。普及を後押しするために、電動車の購入補助金制度や税優遇措置を導入してきた。だが、十分な効果は出ておらず、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の登録残数は昨年末時点で計15万172台にとどまった。100万台の目標達成時期は22年になるとみられている。
政府は電動車の普及を加速させるために今回の法案を作成した。法案が施行されると、配達用EVを購入した企業は通常の減価償却に加え、初年度に50%の特別減価償却が認められるようになる。20年から30年末までの11年間、同ルールを導入する意向だ。
社用車として企業が購入した電動車を対象とする税優遇措置の延長も法案に盛り込んだ。
ドイツでは社用車を社員に無料で貸与する企業が多い。その場合、貸与は社員に対する非金銭的な便宜とみなされ、当該社員の課税所得に加算される。加算方法は(1)車両のカタログ記載価格の1%を毎月の課税所得に上乗せする(2)運行記録をつけ、私的目的で走行した距離の分だけを上乗せする――の2つがあるものの、(2)は手間がかかり面倒なため、大抵の人は(1)の「1%ルール」を選ぶ。
課税所得に加算する額をカタログ価格の「1%」から「0.5%」へと半減するルールは今年1月1日付で施行済み。2019年1月1日から21年12月末までに購入したEVとPHVが適用対象となっている。政府は今回の法案に購入期限を30年末まで延長することを盛り込んだ。
政府はまた、プライベートで利用するEVとPHVを勤務先の充電器で充電した場合に非課税扱いとする時限措置の期限を21年末から30年末に延長することも閣議で了承した。
法案にはこのほか、◇会社が支給する定期券の税優遇拡大◇被用者に貸与する社用自転車(電動アシスト付き自転車を含む)の非課税期限を21年末から30年末へと延長する――も盛り込まれている。