事業所委の知る権利は被用者の個人情報保護に優越するか?

従業員の社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)は同委の業務の遂行に必要な情報を提供するよう雇用主に請求できる。これは事業所体制法(BetrVG)80条2項に記された権利であり、雇用主は拒否できない。では、事業所が要求する情報に被用者各人の健康に関する機微なデータ(センシティブデータ)が含まれる場合も、雇用主はデータを提供しなければならないのだろうか。この問題を巡る裁判で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が4月の決定(訴訟番号:1

ABR

51/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は航空宇宙分野の企業の事業所委員会が同社を相手取って起こしたもの。同社は妊娠した社員が希望する場合、その情報を事業所委に伝えないルールを2015年半ばに導入した。情報の自己決定権を尊重するためだ。

これに対し原告事業所委は、妊娠した社員全員の情報を得られなければBetrVGに基づくチェック業務を遂行できないと批判。妊娠した個々の社員に同社が認めた権利は不当だとして提訴した。

一審と二審は原告勝訴を言い渡した。一方、最終審のBAGは、事業所委員会には妊娠など被用者の機微なデータを得る権利が原則的にあるとしながらも、そうしたデータを得るためには適切なデータ保護措置を取ることを証明しなければならない指摘。下級審ではこの問題に関する審理が十分に行われなかったとして、裁判を二審のミュンヘン州労働裁判所に差し戻した。

事業所委が取らなければならない適切なデータ保護措置としては◇パソコンのパスワード設定によるデータへのアクセス制限や施錠可能な書類棚での文書保管◇当該データを閲覧できる事業所委メンバーを制限する◇母性保護期間などの経過後にデータを破棄する――を示した。

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