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ドイツ経済ニュース

東部二州で極右が第二党に躍進、「怒れる有権者」を大量に取り込む

ドイツ東部のブランデンブルク州とザクセン州で1日、州議会選挙が行われ、新興の極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が得票率をそれぞれほぼ2倍、3倍に伸ばし、両州でともに第二党へと躍進した。既存の政党と政治に対する不満や先行き不安をうまく取り込んだ格好。アンケート調査ではAfDの投票者と他の政党の投票者に大きな意識の違いがあることも鮮明になっており、社会の亀裂は深く深刻だ。

AfDの得票率はザクセン州で9.7%から27.5%、ブランデンブルク州で12.2%から23.5%へと拡大した。国政与党のキリスト教民主同盟(CDU)と社会民主党(SPD)はともに大敗。両州議選で過去最低を記録した。ザクセン州では同州第一党のCDUが39.4%から32.1%へと7.3ポイント後退し、ブランデンブルク州でも第一党のSPDが31.9%から26.2%へと5.7ポイント落ち込んだ。

AfDはCDU、SPD、急進左派の左翼党など既存政党から有権者を奪い取ったほか、前回選挙を棄権した有権者を大量に獲得することに成功した。この結果、投票率はザクセン州で前回の49.2%から66.6%、ブランデンブルク州で47.9%から61.3%へと大きく上昇した。

左翼党は冷戦期間中に旧東ドイツを支配してきた社会主義統一党(SED)の流れをくむ政党であることから、西部地域にルサンチマンを持つ東部の住民のアイデンティティを多かれ少なかれ支える政党として東西ドイツの統一後、高い支持を得てきたが、AfDの出現と成長でその地位を奪われつつある。伝統的に国際連帯を是とする社会主義の政党であることから、AfDの排外主義に共振する有権者をつなぎとめることができないのだ。

「不満」と「不安」が背景に

AfDが今回、大きく躍進した理由のひとつは、前回選挙は2015年の大量難民受け入れ前の14年に行われたということだ。当時は難民が大きな問題となっていなかったうえ、AfD自身も「反ユーロ」を最大の旗印としており、現在に比べると吸引力は弱かった。

AfDが躍進したのは難民を大量に受け入れた15年夏以降であり、16年3月に3州で実施された州議選では得票率がすべて2ケタ台を記録。東部のザクセン・アンハルト州では24.2%に達した。同年9月のメクレンブルク・フォーポマーン州議選でも20.8%と20%を超えている。ザクセン、ブランデンブルク両州でのAfDの躍進はその延長線上にあると言える。

AfDはドイツの16州すべてで州議会に進出している。ただ、西部では得票率が20%に達する州はなく、最大でも15.1%(バーデン・ヴュルテンベルク州)にとどまる。東部での支持率の高さは突出している。

これを読み解くキーワードは「不満」と「不安」だ。

世論調査機関インフラテスト・ディマップが公共放送ARDの委託でザクセン州の有権者を対象に実施したアンケート調査によると、居住地域で「医師の数が減っている」との回答は32%に達した。「警察が減っている」と「公共交通機関が減っている」もそれぞれ30%、26%と少なくない。AfDの支持率が高い小規模自治体に限ると、公共交通機関の減少との回答は43%、医師と警察の減少との回答もそれぞれ41%に達している。

怪我や病気で医者にかかろうと思っても近くに病院がない、あるいはバスの便が少ないというのは過疎地の現実である。ドイツ東部は若者を中心に人口が流出しており、過疎地が多いことから、そうした状況の悪化に歯止めをかけない政治への不満は根強い。

インフラテスト・ディマップのアンケートでは「イスラム教の影響力が強まることが不安だ」とする回答がAfD投票者の98%を占めた。「我々の生活が大きく変わることが不安だ」も同84%と高い。他の政党への投票者ではそうした不安を持つ人が少なく、意識の差が大きいことがうかがわれる。

AfDは既存の政治に対する有権者の「不満」と先行きに対する「不安」の受け皿となることに成功。こうした不満・不安が強い東部で勢力を大きく拡大している。ドイツの石炭発電廃止政策を受けて地域社会存続の危機感が強い炭鉱地域でもAfDの得票率が高かった。AfDは人類の活動により地球温暖化が進んでいることを、主要政党のなかで唯一、否認しており、これが今後の生活に不安を持つ炭鉱地域住民の取り込みにつながった格好だ。

既存政党に再考促すAfD投票者も

既存政党はこうした不安・不満に十分に配慮してこなかった。このため、政治から「放置されている」と感じる市民は多い。

これらの市民の多くはこれまで投票を棄権しており、これが長年、投票率の低さにつながっていた。だが、AfDが右傾化し不満と不安を強く煽るようになったことで一転。投票を通して「怒り」をぶちまけるようになった。政治学者の間からは、一部の有権者のこうした怒りを吸い上げるポピュリズム政党はフランスなど他の欧州諸国だけでなく、ドイツでも出現し得るとの警告が、AfDの登場以前からなされていた。

ただ、有権者のなかにはAfDの政策方針を支持するというよりも既存政党に再考を促す狙いでAfDに投票した者も多い。ブランデンブルク州ではそうした投票者の割合が53%に上った。これらの有権者は既存政党を完全に見限ったわけではないのだ。CDUやSPDなどはこうした有権者に真摯に向き合い、その声を政策に反映させていく姿勢を明確に示すことを求められている。

各党の獲得議席数をみると、ザクセン州ではCDUが45、AfDが38、左翼党が14、緑の党が12、SPDが10となっている。総数は119で過半数ラインは60。これまで同州の与党だったCDUとSPDの合計は55にとどまることから、次期政権は両党にさらにもう1党が加わる形で樹立される見通し。連立交渉で主導権を握るCDUにとってAfDと左翼党は選択肢とならないため、CDUは緑の党、SPDの2党と連立を模索することになりそうだ。

ブランデンブルク州議会の議席数はSPDが25、AfDが23、CDUが15、左翼党と緑の党がそれぞれ10、地域政党が5。総数は88で、過半数は45となる。同州でもこれまで与党だったSPDと左翼党の合計が35にとどまることから、SPDは連立実現に向けてCDU、左翼党、緑の党と交渉する。CDUと左翼党がともに政権入りすることは考えにくいため、次期政権はSPD、CDU、緑の党の3党(計50)かSPD、緑の党、左翼党の3党(同45)が樹立することになりそうだ。