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2019/10/2

総合 - ドイツ経済ニュース

Continental:CASEが直撃、コンチネンタルの構造改革で従業員1割に影響

この記事の要約

世界の自動車生産が減少するなど経営を取り巻く環境が悪化する同時に、車両の電動・IoT化を背景に業界が大きな転換期を迎えていることから、経営資源を将来性の高い分野へと集中して、持続的な成長と財務の強化を実現する。

今後はこれらの分野で事業を強化していく意向で、産業顧客・交換部品事業については売上高に占める割合を現在の約30%から40%へと引き上げていく。

また、事業の部分売却を実施する。

自動車部品世界2位の独コンチネンタルが従業員の約1割を削減する。「CASE」と呼ばれる技術革新の複合的な波を受けて、事業の抜本的な見直しが避けられなくなっているためで、自動車業界が突入した「百年に一度の変革期」は雇用に影響をもたらし出した。競合のボッシュやZFフリードリヒスハーフェンも人員削減に踏み切る可能性がある。メーカーに直接、部品を納入するこれら「ティア1」のサプライヤーの事業再編は今後、下請けの「ティア2」以下にも波及する見通しだ。

コンチネンタルは9月25日、今後10年間の構造改革計画を発表した。世界の自動車生産が減少するなど経営を取り巻く環境が悪化する同時に、車両の「通信端末化」「自動運転化」「シェア化」「電動化」を意味するCASEを背景に業界が大きな転換期を迎えていることから、経営資源を将来性の高い分野へと集中して、持続的な成長と財務の強化を実現する。これに伴い工場閉鎖などを実施。世界の従業員(24万4,000人)の約8%に当たる2万人が影響を受ける見通しだ。

同社は成長が見込める重点分野として(1)運転アシスト・自動運転(2)コネクテッドカー(3)移動サービスなどソフトウエアをベースとする総合システムソリューション(4)タイヤ事業(5)産業顧客・交換部品事業――を挙げた。今後はこれらの分野で事業を強化していく意向で、産業顧客・交換部品事業については売上高に占める割合を現在の約30%から40%へと引き上げていく。またソフト分野の従業員数を拡大する。

一方、市場の縮小が見込まれるエンジン車向け部品などの分野では事業を縮小していく。具体的には◇メーターパネルを手がける独バーベンハウゼン拠点での生産を2025年末で打ち切るほか、研究開発の一部を21年末までに他の拠点に移管する◇独ローディンゲンで手がけるガソリン・ディーゼル車エンジン向け高圧ポンプの生産・開発事業を24年に停止する◇独リンバッハ・オーバーフローナ拠点でのディーゼルエンジン用燃料噴射装置生産を28年で打ち切る◇伊ピサ工場でのガソリンエンジン用燃料噴射装置生産を23~28年に終了する◇米バージニア州ニューポート・ニューズのガソリンエンジン用燃料噴射装置工場を24年に閉鎖する◇米ノースカロライナ州ヘンダーソンの油圧ブレーキ工場を閉鎖する◇マレーシアのプタリン・ジャヤ工場での商用車タイヤ生産を今年末で打ち切る――意向だ。このほか、工場のIoT化に伴って労力が不要となる業務分野でも人員削減を行う。また、事業の部分売却を実施する。

経営上の理由による整理解雇は可能な限り回避する意向で、同社は◇他の部署・拠点への異動◇退職による従業員の自然減の活用◇職場のなくなる社員を対象とする研修・再教育――などを行う意向だ。

構造改革の費用は計11億ユーロで、その大半を19~23年に計上する。23年以降はコストを年およそ5億ユーロ圧縮できるとみている。

ZFは低賃金国に事業移管

ドイツの三大サプライヤーで抜本的な事業の見直しと人員削減への舵を切ったのは現時点でコンチネンタルだけだが、ボッシュとZFも何らかの措置を取るとみられている。

ZFでは現在、取締役会が再編計画の作成に取り組んでいる。同社もCASEに伴う開発費の膨張と自動車市場縮小の影響で業績が悪化し、コスト削減が避けられなくなっているためだ。上半期の営業利益(EBIT)は前年同期比57%減の3億7,800万ユーロへと落ち込んだ。アッヒム・ディートリヒ監査役(従業員代表の事業所委員長)は『ハンデルスブラット』紙に、同社がセルビアに電動車部品工場を開設したことなどを指摘。経営陣が人件費削減に向けてドイツから低賃金国への事業移管を加速いることに危機感を表明した。

ボッシュのフォルクマー・デナー社長は先ごろ、ディーゼル車部品工場を中心に従業員を整理する可能性があることを明らかにした。