ブロックチェーン戦略を政府が策定、デジタルベースの有価証券やICOの法整備へ

ドイツ政府は18日の閣議でブロックチェーン戦略を了承した。同技術が持つ可能性を掘り起して幅広い分野で活用できるようにする狙い。オーラフ・ショルツ財務相は「主導的な技術立国ドイツの地位を一段と強化する」と抱負を述べた。政府は個人データの取り扱いなど市民・消費者の保護に関する問題の検討も行う意向だ。

ブロックチェーンに関する具体的な政策としては、これまで紙ベースでしか発行できない有価証券をデジタルベース(ブロックチェーン上)でも発行できるようにし、決済の迅速・低コスト化を実現する。デジタル通貨の発行を通して企業が資金を調達するイニシャル・コイン・オファリング(ICO)の法整備も行う意向だ。

政府はこのほか、例えば学位や欧州単位互換評価制度(ECTS)の取得単位、その他の資格の照合にブロックチェーンを活用することを検討する。学位・資格をブロックチェーンで管理すると、国外留学・就職が促進されるとみている。

ブロックチェーンでは記録されたデータを消したり修正することができない。これはデータの偽造予防につながるものの、個人データの消去期限や修正請求権などデータ保護法上の問題もあることから、解決策をみつけることは大きな課題となる。

米IT大手フェイスブックが中心となって導入を目指す、ブロックチェーンを利用した仮想通貨「リブラ」については、政府は否定医的な立場を取っている。国家主権が侵害されるとみているためで、ショルツ財務相は「我々は主権を民間企業に譲り渡さない」と明言した。

リブラはフェイスブックがクレジットカード大手ビザ、マスターカードや配車アプリ大手ウーバーなど27社と組んで発行を計画しているデジタル通貨。ビットコインなど他の仮想通貨と異なり、法定通貨など実質資産に裏付けされ、価値が変わらない点が最大の特徴だ。2020年の導入を目指している。政府はリブラのような通貨が法定通貨の代替物となることを阻止するために欧州・世界レベルで他の国と連携していく意向だ。

プロックチェーン戦略に対しては経済界から肯定的な評価が出ている。独情報通信業界連盟(Bitkom)のアッヒム・ベルク会長は「ドイツはブロックチェーンの投入と開発で世界を先導するチャンスを得る」と言い切った。

ただ、リブラを否定する政府の態度に対しては、ビットコイン全国連盟から、新しいデジタル通過を禁止するのではなく、それを創出できるようにするための法的な枠組みを整備すべきだとの批判が出ている。

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