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2019/10/30

総合 - ドイツ経済ニュース

州議選で最左派と最右派が二大勢力に、中道勢力は過半数割れ

この記事の要約

ひとつは、排外政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のなかでも極右色が際立っているビェルン・ヘッケ氏をトップ候補とする同党が得票率を前回の2倍強へと大幅に伸ばしたこと、2つ目は最左派の左翼党が第一党、最右派のAfDが第二党となり、戦後政治の安定を担ってきた中道の二大政党が勢力を大幅に後退させたこと、3つ目は、この結果、議会の過半数議席を基盤とする安定した政権の樹立が極めて難しくなったことだ。

中道4党(CDU、SPD、緑の党、FDP)の合計得票率は前回の54.1%から40.2%へと約14ポイントも縮小している。

AfDと連立を組む政党はないため、次期政権は左翼党を中心に樹立されることになるが、議会の過半数を確保できる選択肢は(1)左翼党とCDUの連立(2)左翼党とSPD、緑の党の現政権にFDPを加えた4党連立――の2つしかない。

独東部のテューリンゲン州で27日に行われた州議会選挙はドイツの政治文化に3つの衝撃をもたらした。ひとつは、排外政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のなかでも極右色が際立っているビェルン・ヘッケ氏をトップ候補とする同党が得票率を前回の2倍強へと大幅に伸ばしたこと、2つ目は最左派の左翼党が第一党、最右派のAfDが第二党となり、戦後政治の安定を担ってきた中道の二大政党が勢力を大幅に後退させたこと、3つ目は、この結果、議会の過半数議席を基盤とする安定した政権の樹立が極めて難しくなったことだ。少数与党政権は戦後ドイツでこれまで経験がなく、同州で過半数政権が樹立されなければ、野党の意向を踏まえながら法案成立を目指すという政治的な意志形成の新たなスタイルの模索が始まることになる。

27日の選挙ではこれまで同州の第一党であった中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)が得票率を前回(2014年)の33.5%から過去最低の21.8%へと11.7ポイントも落とした。一気に第3党に転落している。

これに対し左翼党は2.8ポイント増の31.0%へと拡大。CDUを抜いて第二党から第一党へと躍進した。左翼党が州レベルで第一党となるのはドイツで初めて。同党のボド・ラメロウ州首相が高い人気を保っていることが大きな押し上げ要因となった。

AfDは前回の10.6%から23.4%へと12.8ポイント伸ばし、第二党となった。このほか、中道左派の社会民主党=SPD(4.2ポイント減の8.2%)と緑の党(0.5ポイント減の5.2%)、自由民主党=FDP(2.5ポイント増の5.0%)が議席獲得に必要な5%ラインをクリアした。

AfDのトップ候補であるヘッケ氏は人種差別や反イスラム、反ユダヤ主義的な発言で物議をかもしてきた人物。例えば、アフリカ人は出生率を可能な限り引き上げようとする遺伝子を持ち、「所与の生存圏」を最適に利用しようとする遺伝子を持つ欧州人とは異なるとしたうえで、アフリカ人の欧州流入が続けば、ドイツの人口構造が根本的に変わり、不可避的に国家の解体につながると明言した。15年の難民大量受け入れで大きな役割を担ったSPDのジグマール・ガブリエル党首(当時)を「民族の裏切り者」とののしったこともある。生存権や民族の裏切り者など同氏が用いる言葉にはナチスの用語が多く、マイニンゲン行政裁判所は9月、ヘッケ氏を公共の場で「ファシスト」と呼ぶことに問題はないとの判断を示した。

AfDは自らを幅広い層の国民に支持された「国民政党」と位置づけ、極右政党ではないと強調している。このため、執行部はヘッケ氏を中心とする極右的な潮流とは距離を置こうとしている。だが、AfDの東部支部では極右派の勢力が強く、排除できない状況だ。

ヘッケ氏がトップ候補であるにもかかわらず今回の選挙でAfDが大勝したことは、ナチスの過去との批判的な取り組みを通して形成されてきた戦後ドイツの政治文化に新たな課題が突き付けられたことを意味する。

CDU内から左翼党との連立発言も

ドイツの政権は戦後、二大政党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)とSPDが中心となって運営してきた。これにより政治が安定。小政党の乱立でナチスの台頭を許したワイマール時代(1919~33年)の問題は克服されていた。

だが、最近の選挙ではCDU/CSUとSPDの得票率がともに低下傾向にある。今回の選挙では最左派と最右派がそれぞれ第一党となり、中道勢力がこれまでにないほど弱まったことから、安定政権の樹立は難しい。中道4党(CDU、SPD、緑の党、FDP)の合計得票率は前回の54.1%から40.2%へと約14ポイントも縮小している。

各党の獲得議席数は左翼党が29、AfDが22、CDUが21、SPDが8、緑の党とFDPが各5だった。合計は90で過半ラインは46。これまで同州の政権を担ってきた左翼党、SPD、緑の党の3党は合わせて42で過半数に届かない。また、中道のCDU、SPD、緑の党、FDPの4党も計39にとどまる。AfDと連立を組む政党はないため、次期政権は左翼党を中心に樹立される公算が高いが、議会の過半数を確保できる選択肢は(1)左翼党とCDUの連立(2)左翼党とSPD、緑の党の現政権にFDPを加えた4党連立――の2つしかない。

CDUとFDPはこれまで、左翼党との連立を頭から否定してきた。政策理念の隔たりが大きいためだ。だが、今回の選挙でCDUのトップ候補となったマイク・モーリング議員(CDUのテューリンゲン州委員長)は28日、安定政権を樹立するという責任を引き受ける意向を表明。左翼党との連立に向けた話し合いを排除しない姿勢を示した。その後、この発言を撤回したものの、州レベルとはいえ日本でいえば自由民主党と共産党が手を結ぶようなものであるため、党内で大きな波紋を呼んだ。“禁じ手”を現実的な選択肢として視野に入れざるを得ないほどに、ドイツの政治は難しい局面に立たされている。