従業員間の対立を受けた異動措置で裁判所が判断

従業員同士の仲が抜き差しならないほどに険悪になると、職場の雰囲気が悪くなり、業務にも支障が出る。そうした場合、対立関係にある従業員のどちらかを別の拠点や部署に異動させることは妥当な措置と言えるだろう。

その場合、従業員数が21人以上であるとともに、被用者の社内・事業所内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)がある企業では、その情報を同委に文書で通知したうえで、同意を取り付けなければならない。人事異動は事業所委の同意を必要とすることが、事業所体制法(BetrVG)99条1項に記されているからである。

では、事業所委がない企業や従業員数が20人以下の企業の場合、雇用主の裁量で異動措置を取ることができるのだろうか。この問題を巡る係争でメクレンブルク・フォーポマーン州労働裁判所が7月に判決(訴訟番号:5

Sa

233/18)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は複数の介護施設を運営する福祉団体のR拠点に勤務するコックが同団体を相手取って起こしたもの。同コックは同僚との関係が悪く、特にコック長とは犬猿の仲だった。同コックは2017年5月29日にコック長とけんかをしたことがきっかけで、精神的な打撃を受け、この日から長期の病気休暇を取った。

雇用主は同コックとコック長を同じ職場で働かせ続けることはできないと判断し、同コックに対し11月1日からAR拠点に異動することを命じた。

R拠点までの通勤時間が20分だったのに対し、AR拠点は同50分と長いことから、原告はこれを不服として提訴した。

原告は一審と二審でともに敗訴した。判決理由で二審のメクレンブルク・フォーポマーン州労裁は、労働契約や社内・労使協定、法律に特別な規定がない限り雇用主は被用者の勤務の内容、場所、時間を「公正な裁量(billiges

Ermessen)」に従って決定するとした営業令(GewO)106条の規定を指摘。原告とコック長が長期間、対立していたことを踏まえると、被告雇用主の措置は公正な裁量に基づいたものと言えるとの判断を示した。

最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めなかった。

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