解雇対象の被用者と和解し、解雇日までの期間、勤務を全面免除することを取り決めた場合、労働時間口座に蓄えた「貯蓄」はどのように取り扱うべきなのだろうか。この問題に絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が11月20日の判決(訴訟番号:5
AZR
578/18)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は会計事務所の元秘書が同事務所を相手取って起こしたもの。同事務所は2016年9月27日、同秘書に即時解雇を通告した。同秘書はこれを受けて解雇撤回訴訟を起こし、11月15日に法定で和解した。
和解内容は◇即時解雇を、解雇予告期間を設けた通常解雇に切り替える◇17年1月末を解雇日とする◇解雇日までの期間、同秘書の勤務を有給で全面免除する◇有給休暇の未消化分は勤務免除を以て相殺する――というものだった。
同秘書は解雇の発効後、労働時間口座に計67.1時間の貯蓄が残っているとして、これを金銭(1,317.28ユーロ+金利)に換算して支給することを同会計事務所に要求。拒否されたため裁判を起こした。
原告は一審で勝訴したものの、二審で逆転敗訴。最終審のBAGで再び勝訴した。判決理由でBAGの裁判官は、雇用関係が終了した被用者が労働時間口座の貯蓄を有給休暇に振り替えることはできないとして、未消化の同口座貯蓄は金銭に換算して支給する以外に選択肢がないとの判断を示した。また、労働時間口座の貯蓄を勤務免除で相殺することを法定和解で明確ないし含意的に取り決めておけば、同貯蓄を金銭化して支給する義務はなくなるが、原告と被告の和解文書にはそうした取り決めがなかったと言い渡した。