欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2020/1/8

総合 - ドイツ経済ニュース

独経済に薄明かり、業績「拡大」予測が「縮小」を上回る

この記事の要約

ドイツ経済はひとまず底を打ったとの見方が出てきた。Ifo経済研究所の企業景況感指数は8月を直近のボトムに上昇基調が継続。財界系シンクタンクIW経済研究所のミヒャエル・フューター所長は国内の主要業界団体を対象とするアンケー […]

ドイツ経済はひとまず底を打ったとの見方が出てきた。Ifo経済研究所の企業景況感指数は8月を直近のボトムに上昇基調が継続。財界系シンクタンクIW経済研究所のミヒャエル・フューター所長は国内の主要業界団体を対象とするアンケート調査の結果を踏まえ「かすかな希望の光が見えてきた」として、リーマンショックに端を発する2009年のような深刻な景気後退局面に陥ることはないとの見方を示した。

IWは独業界48団体を対象に定期アンケート調査を実施している。12月26日に発表した年末の調査結果では現状判断が前年に引き続き大幅に悪化したものの、20年の業績見通しについては「拡大」を予想する団体が「縮小」を上回るなど明るい材料もあった。Ifo企業景況感調査でも今後の見通しを示す期待指数は3カ月連続で改善。改善幅は2.9ポイントで、現状判断指数の同0.1ポイントを大きく上回った。

IWの調査によると、「1年前に比べて状況が改善した」とする回答はわずか1団体(投資・資産運用全国連盟=BVI)で、前年末の7団体から大きく減少。「悪化した」は21団体から32団体へと増え、2年連続で大幅に拡大した(下のグラフを参照)。景気循環のほか、保護主義や地政学リスクが響いた。デジタル化や温暖化防止など現代の課題に対応しなければならないという事情も反映されたとIWはみている。主要製造業の自動車、電機、機械、化学では状況判断が軒並み悪化した。

一方、「来年(20年)は生産や売り上げ、利益などの業績が拡大する」との回答は19団体に上った。18年末の調査の28団体からは減少したものの、「業績が縮小する」の12団体を上回っており、先行きを楽観する業界は悲観する業界よりも多い。旺盛な住宅需要を背景に建設、採石・採土、不動産業界が業績拡大を予想。流通、保険、IT業界も明るい見通しを持っている。

製造業では機械と金属加工業界が業績縮小と回答したのに対し、航空・宇宙、鉄鋼、非鉄金属は拡大を予想。自動車、電機、化学は「横ばい」と回答した。

20年の投資額については13団体が「拡大」と答えた。「縮小」(14団体)をやや下回っている。製造業で「拡大」と回答したのは造船、ガラス、食品業界など。自動車と電機は厳しい状況に置かれているものの、デジタル化などの構造転換を背景に投資額を削減しにくいことから「横ばい」を保つ見通しだ。機械と金属は「縮小」と回答した。

銀行業界では民間銀行協会(BdB)以外の2団体(貯蓄銀行業界団体と信用協同組合団体)が「拡大」と答えた。事業のデジタル化を推し進めないと淘汰されかねないという事情が背景にある。

「20年に雇用を拡大する」との回答は12団体で、1年前の18団体から6団体減少。「縮小」は6団体増の14団体に増えた。19年から人員削減の動きが本格化している自動車、機械や、業務・サービスのデジタル化が進む銀行、保険業界は縮小組に入る。