三菱自動車のディーゼル車に排ガス不正操作の疑いがあるとして独フランクフルト検察当局が進めている捜査は、独連邦陸運局(KBA)のテストがきっかけになったことが、分かった。同検察がロイター通信に22日、明らかにしたもので、KBAは三菱車のテスト結果が何度も「クロ(ネガティブ)」となったことから捜査当局に通報。検察は昨年11月中旬に捜査を開始した。
フランクフルト検察当局は21日、三菱自動車などを対象に立ち入り捜査を実施した。同社製ディーゼル車に排ガスを違法に操作する機能が搭載されている疑いが持たれているためだ。台上試験と路上走行の違いを認識して窒素酸化物(NOx)の処理システムが台上試験でのみ適正に作動する機能が搭載されている可能性があるという。
不正の疑いが持たれているのは欧州排ガス基準「ユーロ5」と「ユーロ6」に対応した4気筒エンジンの搭載車。2015年9月以降に新車登録された1.6リットル車と、同12年11月以降の2.2リットル車が対象となっている。
このうち1.6リットル車のディーゼルエンジンについては、仏PSAグループから調達した可能性があることが浮上している。ロイター通信が22日に報じたもので、PSAの広報担当者は15年から18年にかけて1.6リットルエンジンを三菱自に供給した事実を認めた。ただ、同エンジンは法令で定められた規定を遵守しているとしており、検察の捜査対象となっているかどうかは分からないとしている。
21日の立ち入り捜査ではサプライヤー大手のデンソーと独コンチネンタルも対象となった。業界関係者の情報としてロイター通信が報じたところによると、コンチネンタルはエンジン制御装置をフランス企業経由で三菱自に供給したという。コンチネンタルの広報担当者は23日、「わが社は排ガステスト値を不正操作するためのソフトウエアを~受注を通しても自らの意志でも~いかなる顧客にも供給したことがない」として、違法な製品を三菱に販売したことはないとの見解を表明した。
スズキのEU規制違反を蘭が認定
一方、オランダ陸運局は23日、スズキと欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のディーゼル車が、欧州連合(EU)の排ガス規制に違反し、不正なソフトを使用していたと認定したと発表した。スズキは是正措置を講じなければ、対象車種の欧州での販売が禁止される。
対象となるのはスズキの「ビターラ(日本名エスクード)」、FCA
の「ジープ・グランドチェロキー」。蘭陸運局は17年7月、両車種がEUの排ガス規制を逃れるため、不正なソフトを搭載していた疑いがあるとして、調査を開始していた。
陸運局は調査の結果、試験時と路上走行時の排ガス制御システムの作動が異なり、実走行では基準を大きく上回るNOxが排出されていたと認定した。
スズキはビターラのディーゼルエンジンをFCAから調達していた。同社は陸運局の指摘を受け、17年にソフトを修正したが、修正後のソフトも問題があると判定され、是正を求められた。陸運局は十分に対処しなければ、欧州での販売に必要な型式認定を取り消すとしている。
ジープ・グランドチェロキーについては、ソフト修正のため欧州全体でのリコールを命令。FCAに適正な対応を促すため、予備的措置して型式認定取り消しの手続きに着手した。
スズキは2月中旬までの回答を求められている。EUでは1カ国で形式認定が取り消されれば、域内全体で販売できなくなる。スズキは18年に欧州向けビターラの生産を終了しており、形式認定が取り消されても大きな影響はない。同社は24日、「陸運局の調査に全面的に協力していく」とコメントした。