新型肺炎が独スポーツ用品大手を直撃、ICT業界では部品供給に支障も

中国を中心に流行する新型コロナウイルスによる肺炎の影響がドイツ企業にも出ている。スポーツ用品大手アディダスは19日、旧正月(春節)に当たる1月25日以降、同国の売上高が85%落ち込んでいることを明らかにした。中国は市場のほか、製品の供給元としても重要であるため、長期化すると業績が下振れする懸念がある。

競合プーマもしわ寄せを受けている。同国直営店110カ所のうち現在、営業しているのは40カ所に過ぎない。また、営業していても閑古鳥が鳴いている店舗が多い。同社製品を取り扱うスポーツ用品店(2,500店)の大半は休業中だ。グルテン社長は、状況は近く正常化するとの予想を示したものの、現状がさらに4週間続いた場合は業績予測の下方修正が避けられなくなると述べた。中国売上高は昨年、41%増加した。同社売上の12%以上を占めている。

中国の製造委託先メーカーでは春節の終了後、生産が再開されている。ただ、出稼ぎ労働者の多くが戻っていないため、フル稼働できない状況となっている。プーマは世界で販売する製品の約20%を中国から輸出しているため、生産能力の低下が長期化すると業績が押し下げられることになる。

一方、独情報通信業界連盟(Bitkom)が国内の情報通信技術(ICT)企業80社を対象に実施した緊急アンケート調査によると、「中国からの部品供給が停止ないし減少した」との回答は23%に上った。「生産の減少ないし停止に追い込まれた」企業も3%ある。

感染予防措置の一環で「中国への出張を禁止ないし制限している」は30%に上った。「見本市など大型イベントへの参加を禁止ないし制限している」も34%と少なくない。Bitkomのアッヒム・ベルク会長は「多くの企業はアジアのメーカー、サプライヤー、顧客と取引がある」と指摘したうえで、「社員の健康と安全は企業の最優先事項だ」と強調。企業の感染予防対策が事業に影響するのは避けられないとの見方を示した。

新型肺炎の流行が「自社の2020年の業績を圧迫する」との回答は25%に上った。「景気の大きなリスク要因だ」は54%と過半数に達している。アンケートに参加した企業の35%は中国のサプライヤー、パートナーと取引し、23%は同国に顧客を持っている。13%は現地に拠点がある。

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