電気配達車(配達EV)製造会社ストリートスクーター(STS)の共同創業者であるギュンター・シュー氏が同社を現親会社のドイツポストから買い戻す意向だ。ドイツポストは不採算を理由にSTSをメーカーから、自社が保有するSTS製配達EVの運営会社へと転換する計画。シュー氏はこれを憂慮しており、条件が合えば再買収するとしている。経済誌『ヴィルトシャフツボッヘ』に明らかにした。
STSは独西部のアーヘンにあるライン・ヴェストファーレン工科大学(RWTH)のスピンオフとして同大の教授だったシュー氏が同僚のアッヒム・カンプカー氏と10年に設立したEV専門メーカー。ドイツポストは11年、配達EVの開発を同社に委託し、14年に子会社化した。
ドイツポストは自社の配達車両を内燃機関車からSTS製のEVへと切り替えていった。また、外部企業などへの販売も行った。
だが、物流企業であるドイツポストはSTSをいつまでも子会社にとどめておく考えはもともとなかった。このため、同子会社の合弁会社化に向けてパートナー企業を模索。これが成功しなかったことから、STSを配達EVの運営会社へと転換することを決めた。年内に製造事業を停止する意向だ。
ドイツポストが2月末にこの方針を明らかにしたことを受けて、シュー氏はSTSの買収を打診した。同氏はヴィルトシャフツボッヘの取材に対し、所有権には公共の福祉に資する義務が付随していると述べたうえで、「我々は当時、(低価格のEVを実現するという)イノベーション運動の所有権をドイツポストに譲渡したが、ドイツポストは(所有権に伴う)この義務を守らなかった」と批判した。
ドイツポストは昨年、STSで1億ユーロの損失を計上した。EVの生産停止に伴い今年は3億~4億ユーロのコストを計上する。シュー氏への売却交渉を行う場合はこれらの問題が議論の大きな焦点となりそうだ。