大量解雇計画はどの職安に提出すべきか?

雇用主は「事業拠点(Betrieb)」で大量解雇(Massenentlassung)を実施する前に、職業安定所に計画を提出しなければならない。これは解雇保護法(KSchG)17条1項に記されたルールである。どの程度の人数が大量解雇に該当するかも明記されており、従業員数が21人~59人の企業では6人以上となっている。では解雇対象者が複数の拠点にいる場合、雇用主はどの職安に計画を提出しなければならないのだろうか。この問題について最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が13日の判決(訴訟番号:6

AZR

146/19)で判断を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は2017年に経営破たんした航空大手エア・ベルリンのパイロットが同社の管財人を相手取って起こしたもの。エア・ベルリンは2017年8月15日に経営破たんし、10月27日付で業務を停止した。管財人はこれを受けて全被用者を11月末付けで解雇した。

これに対し原告は、フライト業務の一部は他社が代替運行する形で存続しているとして、管財人が職安に提出した解雇計画は内容的に正しくないと批判。業務が停止したために解雇するとした管財人の主張は誤りであり、誤った事実認識に基づいて職安に提出された解雇計画は無効だとして、解雇無効の確認を求める裁判を起こした。

原告は一審と二審で敗訴したものの、最終審のBAGで逆転勝訴した。判決理由でBAGの裁判官は、管財人は解雇計画の提出先を誤ったと指摘。この形式上の誤りを理由に解雇無効を言い渡した。

エア・ベルリンでは、複数の空港内に「ステーション」と呼ばれる事業拠点があり、被用者は地上、客室、操縦室勤務を問わずいずれか1カ所の拠点に配属されていた。原告パイロットはデュッセルドルフ空港配属だった。

一方、管財人は地上勤務職員と客室乗務員、パイロットがそれぞれ別の組合に組織されていたことを踏まえ、解雇計画を職能グループごとに作成。パイロットの解雇計画はフライト業務の統括拠点のあったベルリン北区の職安に提出した。

BAGの裁判官はこれを問題視。KSchG17条1項に定める「事業拠点」は、欧州連合(EU)の大量解雇指令(Directive

98/59/EC)に記された「事業拠点」に当たることを確認したうえで、エア・ベルリンでは「ステーション」が事業拠点に該当すると指摘。原告に関してはデュッセルドルフ職安が担当の役所となるとして、ベルリン北区に提出した解雇計画に原告を含めていたことは誤りだとの判断を示した。

解雇が無効であることを理由に、BAGは他社への業務の(部分)移管=業務停止があったかどうかについては判断を示さなかった。

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