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2020/3/18

総合 - ドイツ経済ニュース

ドイツが危機モード入り、生活維持に必要な店舗を除き営業禁止

この記事の要約

仏墺など5カ国との間を移動できるのは、国境を越えて通勤する人など正当な理由がある人に制限される。

鉄道と空路を通してこれらの国と行き来することについては現時点で制限が加えられていないものの、例えばロベルト・コッホ研究所が新型コロナの危険地域に指定した仏東部のアルザス・ロレーヌ地方からドイツに戻ってきた人は外出を2週間、控えることを要請されている。

このため州政府は飲食店の営業を18日から30日まで制限する。

ドイツ社会がにわかに危機モードへと突入した。新型コロナウイルスの感染が加速度的に広がっていることから、国(連邦)と州は拡大のスピードを鈍化させて医療機能を維持するために学校と保育施設の閉鎖、国境管理の導入を矢継ぎ早に導入。16日にはスーパーマーケットや薬局、銀行など基本的な生活の維持に必要な店舗を除いてサービス事業者に営業停止を命じることを取り決めた。これらの対策は基本法(憲法)で保障された移動、営業の自由を大幅に制限するもので、メルケル首相は「これまでにわが国で行われたことのない断固たる措置だ」として、異例の取り組みであることを強調した。シュタインマイヤー大統領はビデオメッセージで「連邦・州政府の行為への理解と信頼」を市民に呼びかけた。

ロベルト・コッホ研究所によると、国内の感染者数は1日時点で117人にとどまっていた。4日にはこれが240人、9日には1,139人へと拡大。17日15時には7,156人に達した。感染経路を確認して感染者を隔離する措置では感染の拡大を防げない状況となっており、従来よりも踏み込んだ措置の発動が必要不可欠な状態だ。

これを受けて国内の16州すべてが学校と保育施設の全面閉鎖ないし休校を、先週末の13日から14日にかけて決定した。閉鎖・休校期間は州によって多少の違いがあるものの、大半は16日から4月のイースター休業明けまでとなっている。学校のイースター休業は州によって異なり、最終日は最も早いブレーメンで4月13日、最も遅いザールラントで同24日。デュッセルドルフを州都とするノルトライン・ヴェストファーレンとミュンヘンを州都とするバイエルンは18日、首都ベルリンは17日となっている。

子供を持つ就労者の多くはこれを受けて週明けの16日から出勤できなくなくなった。通勤客は普段に比べ大幅に少ない。乗客の多くは感染リスクへの不安を持っており、座席が空いていても座らなかったり、隣の人と距離を取る人が少なくない。欧州では普段見かけないマスク姿の人もいる。

国境の出入国管理で物流に支障も

人の移動も感染拡大の原因となっていることから連邦政府は15日、一部周辺諸国との国境で暫定的な出入国管理を導入することを明らかにした。オーストリア、スイス、フランス、ルクセンブルク、デンマークの5カ国を対象に16日8時から開始した。チェコ、ポーランド、デンマークもドイツからの人の出入りを制限しており、欧州連合(EU)域内の人の自由な移動を保障するシェンゲン協定のルールは一時的ながら棚上げ状態となっている。

仏墺など5カ国との間を移動できるのは、国境を越えて通勤する人など正当な理由がある人に制限される。正当な理由がない場合は、ドイツ人およびドイツに居住する外国人がドイツに入国するケースを除いて、これらの国との国境を越えることができない。

鉄道と空路を通してこれらの国と行き来することについては現時点で制限が加えられていないものの、例えばロベルト・コッホ研究所が新型コロナの危険地域に指定した墺チロル州からドイツに戻ってきた人は外出を2週間、控えることを要請されている。

政府はどうしても必要な場合を除いて旅行そのものを控えることも市民に要請している。

モノの移動には制限が設けられていないことから、企業はこれまで通り物流活動を行うことができる。ただ、国境によってはトラックと乗用車の検問レーンが分けられていなかったり、トラックの運転手にも細かなチェックを入れるところがあり、長い渋滞が発生している。イタリアからの入国を厳しく制限しているオーストリアのブレンナー峠では渋滞の長さが80キロに達したという。こうした状況がシェンゲン圏内の多くで発生すると、物流に大きな支障が出、人々が必要とする食糧や日用品の供給が滞る恐れがある。

夜間のレストラン営業を禁止

感染の拡大を抑えるためには人と人が接触する機会を減らす必要がある。このため深刻な状況にあるイタリア、スペイン、オーストリア、フランス政府は外出を制限している。

ドイツではそこまで踏み込んだ措置が現時点で取られていないものの、連邦・州政府は市民が他人と近距離で接する機会を減らすために、当面の生活の維持に必要のない商品・サービスを提供する小売店・サービス事業者の営業を一時的に禁止することを取り決めた。各州政府はこれに基づいた措置を実施する。

営業停止が命じられたのはバー、クラブ、居酒屋(クナイペ)、劇場、コンサートホール、水泳施設、フィットネスクラブなど。教会のミサやスポーツ施設の利用も禁じられている。

一方、基本的な生活の維持に欠かせない商品とサービスを提供する事業者は引き続き営業を行うことができる。具体的には食料品店、スーパーマーケット、飲料店、ドラッグストア、薬局、銀行、郵便局、ガソリンスタンド、クリーニング店、理容・美容室、手工業者、デリバリーサービスなどがこれに該当する。

トイレットペーパーやパスタが店頭で品薄となり、自宅の備えが少ない市民がいることから、スーパーマーケットなどでは営業時間規制が一時的に緩和される。日曜営業も許可される。

レストランには営業時間の制限が設けられた。開店時間は早くて6時で、遅くとも18時までに閉店しなければならないことから、夜間営業はできない。営業する場合は座席の間隔を一定程度以上、保つことが義務付けられる。

ホテルへの宿泊はどうしても必要な場合に限られる。このため観光客はホテルに宿泊できなくなる。

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