新型コロナウイルスの流行が欧州の物流に大きな影を落としている。感染拡大を防ぐために国境管理を再導入・強化のする動きがにわかに広がり、そのしわ寄せがトラック輸送を直撃しているためだ。消費者の買いだめで小売店への配送頻度が増えていることは人手不足が深刻な輸送業界に追い打ちをかけている。
欧州連合(EU)の欧州委員会は16日に発表した国境管理に関するガイドラインで、検問所にトラック優先レーン(グリーン・レーン)を導入するなどして、域内の物流に支障が生じないようにすることを加盟国に要請した。物流が滞ると経済活動や市民生活に甚大な影響が出るためだ。
だが、検問所では乗用車だけでなくトラックに対しても厳格な入国検査が行われており、ポーランド国境の独ゲルルッツでは18日、65キロの渋滞が発生した。国境通過の所要時間は30時間に達し、運転手の健康が危惧されたことから、警察や軍は水、食料、毛布を配布した。ポーランドが50カ所以上の国境を閉鎖していることは、検問所での渋滞に拍車をかけた。
そうした状況は他の中東欧諸国でも発生している。17日から外国人の入国を禁止したハンガリーとの国境である墺ニッケルスドルフでは18日、50キロの渋滞が発生した。トラックは入国禁止の対象となっていないものの、現場ではハンガリー人以外の運転手の入国が拒否されているという。
セルビアは国境44カ所を閉鎖。トランジットの車両には12時間以内の国内通過を命じている。
国外から帰国した自国民に14日間の隔離命令を出す国が中東欧に多いことも物流上の懸念材料となっている。ドイツなど西欧で働く東欧出身の運転手がその間、働けなくなり、物資の輸送に影響が出るためだ。独物流業界団体BGLのディルク・エンゲルハルト会長は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に、トラック運転手は基本インフラを維持するうえで必要不可欠な存在だとして、EU統一のルールを作る必要があると訴えた。
トイレットペーパーや缶詰、小麦粉などが小売店の店頭で不足し、配達頻度が増えていることもBGLの悩みの種だ。ドイツでは以前から運転手が不足しており、配達能力拡大の余地が小さいためだ。
鉄道での貨物輸送は国境管理の対象となっていない。ドイツ鉄道(DB)はこれを受けて新規顧客の開拓を強化している。トラック輸送に代わる選択肢として国境を超える輸送サービスを売り込む意向だ。電話(0203-9851-9000)と電子メール(neukundenservice@deutschebahn.com)の専用窓口で相談を受け付けている。すでにイタリアからパスタなどの食料品を輸送することが決まっている。トイレットペーパーなどの原料であるセルロースをオランダから輸送する取引も近く、成立する見通しという。