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2020/4/1

総合 - ドイツ経済ニュース

「20年は最大5.4%のマイナス成長に」=5賢人委

この記事の要約

5賢人委はドイツ経済が今後、どのように推移するかは◇新型コロナの拡大抑制に向けた保健政策の規模と期間◇景気回復の開始時期――にかかっているとの前提に立って3つのシナリオを作成した。

実質国内総生産(GDP)成長率は今年マイナス2.8%となるものの、来年はプラス3.7%へと好転する。

第2のシナリオはコロナ抑制の保健政策が長期化し生産も幅広い分野で停止されるものの、その後V字回復するというもの。

政府の経済諮問委員会(通称:5賢人委員会)は3月30日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて作成した臨時レポートを公表した。新型コロナ問題が今後、どのように推移するかを読みにくいことから3つのシナリオを想定。いずれのシナリオでも上半期の景気後退は避けられず、2020年全体のマイナス成長幅は最大5.4%に達すると試算している。

5賢人委はドイツ経済が今後、どのように推移するかは◇新型コロナの拡大抑制に向けた保健政策の規模と期間◇景気回復の開始時期――にかかっているとの前提に立って3つのシナリオを作成した。現時点で最も可能性が高い「基本シナリオ」は景気回復が今夏に始まるというものだ。今年の実質国内総生産(GDP)成長率は上半期の景気後退が響いてマイナス2.8%となるものの、来年はプラス3.7%へと好転する。

第2のシナリオはコロナ抑制の保健政策が長期化し生産も幅広い分野で停止されるものの、その後V字回復するというもの。このケースでは上半期の景気後退幅が大きいことから20年の成長率はマイナス5.4%と大きく落ち込むものの、21年はプラス4.9%と大幅成長となる。

第3のシナリオは新型コロナの拡大抑制に向けた保健政策が夏以降も継続され、景気回復は21年にずれ込むというもの。この場合、経済構造が被る深刻な影響を政府の支援策で防ぐことができないことから、融資条件や景気の先行き見通しが悪化し、投資と消費はともに抑制される見通しだ。20年の成長率はマイナス4.5%となり、マイナス成長幅は第2のシナリオを下回るものの、21年はプラス1.0%と小幅回復にとどまる。

基本シナリオによると、個人消費は今年、マイナス3.0%となり、前年のプラス1.6%から大幅な縮小へと転じる。政府最終消費支出は2.3%増えるものの、消費全体では前年を1.5%割り込む見通しだ。投資では設備投資が6.8%減少。建設投資は2.7%増加するものの、総固定資本形成は0.2%後退する。内需全体では1.2%落ち込む。

輸出は4.4%減少する。輸入は0.9%減と減少幅が小さいことから、GDP成長率(-2.8%)に対する外需(輸出-輸入)の寄与度はマイナス1.7ポイントに上る。

GDPが縮小するうえ、企業の倒産防止や資金繰り支援に巨額の国債を発行することから、今年の財政収支は9年ぶりに赤字へと転落する見通しだ。5賢人委は財政赤字の対名目GDP比率を0.8%と予想。来年は1.0%に膨らむとみている。

これまで低下してきた失業率も上昇へと転じる見通しで、今年は昨年の5.0%から5.3%へと拡大する。来年については5.2%への低下を見込んでいる。