欧州連合(EU)の欧州委員会は3日、企業への融資で加盟国が引き受ける債務保証の許容上限比率を一時的に100%に引き上げることを明らかにした。貸し倒れリスクの一部を民間銀行が負担するこれまでのルールでは新型コロナ危機のしわ寄せで資金繰りが悪化した中小企業の多くが融資を得られず、経営破綻の大量発生につながりかねないことから、年末までの時限措置として例外ルールを導入する。必要があれば期限の延長を検討する。
新型コロナウイルスの拡大防止策の一環で、ドイツなどでは現在、衣料品店や飲食店など基本的な生活の維持に必要のない事業者は営業停止を命じられている。また、サプライチェーンの支障や需要の減少を受けて多くのメーカーが操業短縮や生産停止に追い込まれている。
こうした企業は収入が大幅ないし完全になくなる一方で、店舗の賃貸料などは払い続けなければならず、資金繰りが悪化している。
これらの企業を支援するためにドイツ政府は総額4,000億ユーロの融資保証を実施する法案を議会で成立させた。政策金融機関のKfWは一般銀行が企業に行う融資の最大90%を保証する決まりだが、中小企業の大半は財務基盤が弱く銀行は残り10%のリスク引き受けを拒否することが多い。
国による最大90%の債務保証ルールは新型コロナ危機への対応策として欧州委員会が時限措置として認めたもので、債務保証の許容上限は本来、これよりも低い。この措置にもかかわらず中小企業の多くは融資を受けられないことから、独経済省は国の債務保証の許容上限を一時的に100%に引き上げることを認めるよう欧州委に要請。同委は80万ユーロを上限に国が債務を100%保証することを認めた。
独政府はこれを受けて6日、2019年売上高の最大3カ月分に相当する額の融資について国が債務保証を全額引き受けることを決めた。従業員数10~50人の企業は上限額が50万ユーロ、50人超の企業は同80万ユーロとなっている。19年1月1日以降に活動実態のある企業で、◇19年単年ないし過去3年間の平均で黒字を計上している◇経営悪化の時期が今年1月1日以降――をともに満たしていれば、同保証を受けることができる。