ドイツ連邦カルテル庁は27日、鉄道車両世界最大手の中国中車(CRRC)が鉄道設備大手の独フォスローから入換用機関車子会社フォスロー・ロコモティブズを取得する計画を承認したと発表した。中国国営企業による欧州企業の買収であることから慎重に調査を行ったが、欧州市場の健全な競争が阻害されることはないと判断した。カルテル庁のアンドレアス・ムント長官は、CRRCは国家の保護を受けた巨大企業であるうえ、世界経済での覇権獲得に向けた中国の産業戦略「中国製造2025」「一帯一路」でも重要な役割を担っているものの、欧州市場ではほとんど存在感がないと指摘、買収対象のフォスロー・ロコモティブズが近年、競争力を急速に落としていることも踏まえ、同買収計画に問題はないとの認識を示した。
入換用機関車は停車場や車両基地の構内で鉄道車両を移動させる操車の作業を行う機関車。フォスロー・ロコモティブズは欧州当該市場の大手メーカーであるものの、近年ニーズが増えているハイブリッド機関車などの分野には参入しおらず、他のメーカーに後れを取っている。また、欧州の入換用機関車市場では競合アルストム、シュタットラー、東芝が競争力を高めている。
一方、CRRCは欧州市場に参入しているものの、これまでに獲得した入換用機関車の受注は少ない。
カルテル庁はこれらの事情を踏まえてCRRCの買収計画を承認した。
フォスロー・ロコモティブズはディーゼルエンジンを動力源とする入換用機関車の欧州最大手メーカーで、売上高は1億ユーロ強、従業員数は約500人。親会社フォスローは昨年8月、同子会社をCRRCに売却することで合意した。経営資源を鉄道インフラ分野に絞り込む戦略に沿った措置で、今回の取引により鉄道車両事業からの撤退を完了することになる。