5G設備への中国勢参入に高ハードル、製造元の信頼性調査=法原案

次世代移動通信規格5Gを念頭に置いたITセキュリティ法原案をドイツ連邦内務省が作成した。通信インフラを電子的なスパイ活動や破壊工作から守るために設備・部品の認証を義務付けるだけでなく、製造元の信頼性も重視するというもので、華為技術など中国政府の影響下にある通信設備メーカーに対し高い参入障壁を設定する内容だ。内務省は関係省庁との調整を夏季休暇前に終了させることを目指している。同省の確認を得た情報として『フランクフルター・アルゲマイネ』紙などが報じた。

5Gが実用化されると、大量の機器がネットワークでつながり、莫大な情報が常に自動的にやりとりされるモノのインターネット(IoT)社会が本格的に到来する。そうした情報には高度なセキュリティが要求される公的機関や自動運転車、機械のデータも含まれることから、データを確実に保護することはこれまで以上に重要になる。また、ネット経由でインフラが破壊されると、経済・政治・社会の機能が麻痺することから、通信インフラを構成する機器や部品、ソフトウエアの信頼性も欠かせなくなる。

中国の通信設備メーカーは5G分野で先行しているものの、製品に組み込んだ部品などを通してスパイ活動を行っているとの批判を受けている。特に華為は非公開企業で事業活動に不透明な部分が多いことから中国政府・軍との関係が深いとみられており、米国政府は5G通信網から華為製品を全面的に締め出すことを友好国に要求。オーストラリアなど複数の国はすでに、5Gシステムに同社製品を用いないことを決定した。

ドイツの政界でも警戒は強く、中国メーカーの製品を中核通信インフラから排除することを求める声が出ている。ただ、中国メーカーをあからさまに排除すると外交関係が悪化するのは必至だ。与党内の意見が分かれていることもあり、政府は難しい選択肢の前に立たされている。

こうした状況のなか、欧州連合(EU)の欧州委員会は1月末、5Gの安全性強化に向けた勧告を発表した。加盟国に対し、参入を希望するメーカーを「技術面と非技術面」の双方からリスク評価するよう要請している。具体的には企業活動への第三国の関与や、国家が背後にいる企業かどうかが焦点となる。

内務省の法原案はこれに沿った内容で、中核インフラの製品・部品では国が設定する技術規格を満たすことを参入条件として明記している。規格を満たしているかどうかの認証は連邦情報技術セキュリティ庁(BSI)が行う。

非技術面の評価では、参入希望メーカー自体の信頼性を調査する。これらのメーカーにスパイや破壊工作に利用できる装置が製品に組み込まれていないことを確約させる。信頼性の調査には情報機関が関与。内務省は信頼性に疑いが持たれるメーカーの製品の使用を禁止できる。ドイツの情報機関である連邦情報局(BND)は中核通信インフラへの中国製品の投入に対し以前から警鐘を鳴らしていることから、信頼性調査は華為などにとって高いハードルとなる可能性がある。

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