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2020/6/3

総合 - ドイツ経済ニュース

独は仏英に次ぐ欧州3位の投資先に

この記事の要約

欧州を対象とする外国直接投資(FDI)の2019年の予告件数は前年比0.9%増の6,412件となり、過去最高となった17年(6,653件)に次ぐ高い水準を記録したことが、監査法人大手アーンスト・アンド・ヤング(EY)の調 […]

欧州を対象とする外国直接投資(FDI)の2019年の予告件数は前年比0.9%増の6,412件となり、過去最高となった17年(6,653件)に次ぐ高い水準を記録したことが、監査法人大手アーンスト・アンド・ヤング(EY)の調査で分かった。ドイツは横ばいの971件で、前年に引き続き3位。上位のフランス、英国に水をあけられた。

最大の投資先はフランスで、前年比17%増の1,197件へと大きく拡大。英国(5%増の1,109件)を抜いて首位に躍り出た。南欧諸国はおおむね好調で、スペイン(横ばいの4位)は55%増の486件、ポルトガル(5ランク上昇の11位)は114%増の158件へと大きく伸びた。イタリアも5%増え14位から12位へと上昇している。ドイツや北欧諸国が人材不足にあえいでいることが追い風となった格好だ。

中東欧は20%減の1,274件へと大きく落ち込んだ。同地最大のポーランドが26%減の272件へと後退。ルーマニア(28%減)、チェコ(35%減)、バルト三国(23%減)も振るわなかった。

対欧州FDIの最大の投資元国はこれまでに引き続き米国で、1483件(5%増)に達した。2位のドイツ(3%減の675件)を大きく引き離している。3位は英国(3%増の493件)、4位はフランス(6%増の362件)。前年に26%減となった中国は反動で23%増の312件となり、5位に付けた。このほかイタリアが10%増の200件(9位)、カナダが26%増の163件(10位)と大きく伸びている。スイス(12%減の258件)、日本(8%減の248件)、オランダ(18%減の203件)は前年を割り込んだ。

対欧州FDIが最も多かった分野はデジタルで、1,214件に達した。2位のビジネス・サービス(766件)を大きく引き離している。3位の輸送機器(532件)と4位の機械・設備(528件)は差が小さく、5~7位も農業食品(375件)、運輸・物流(369件)、金融(366件)が僅差で並んだ。雇用創出では輸送機器が6万5,680人で最も多く、これにデジタルが4万927人で続いた。

主要分野の対欧州FDIを国別でみると、デジタルでは英国が355件で最も多く、2位フランス(205件)、3位ドイツ(145件)を大きく上回った。ビジネス・サービスではフランスが173件で1位、ドイツが134件で2位、英国が113件で3位。

輸送機器でもフランスが86件でトップに立った。同分野の大国であるドイツは53件で2位にとどまり、3位英国(52件)との差はほとんどない。

機械・設備ではドイツが129件で1位となった。2位フランスは89件、3位英国は79件となっている。

サプライチェーン分散化が課題に

対独FDIをみると、最大の投資元国は対欧州同様、米国で193件に上った。ただ、前年に比べ12%減少している。増加幅が大きかったのはトルコ(120%増の77件で4位)、カナダ(67%増の25件で10位)、中国(27%増の84件で3位)の3カ国。中国は16年の118件をピークに2年連続で減少したが、再び増加へと転じた。

対独FDIが最も多い分野は流通で、177件(18%)を占めた。2~5位は差が小さく、デジタルが139件(14%)、ビジネス・サービスが126件(13%)、機械・設備が122件(13%)、輸送機器が113件(12%)だった。

EYの推定によると、欧州FDIの2019年予告件数のうち65%はすでに完了した。残りは25%が手続きの最中で、10%は撤回された。この数値には新型コロナウイルス感染拡大の影響が加味されておらず、撤回の割合は増える可能性がある。

コロナ危機を受けて企業は投資を必要最低限に抑えていることから、今年の対欧州FTDは昨年を30~50%下回るというのがEYの予想だ。特に自動車と機械で減少幅が大きくなるとみている。

企業の今後の投資活動に関しては◇特定の国や企業に過度に依存することのリスクがコロナ危機で明らかになったことからサプライチェーンの多元・分散化◇デジタル化◇温暖化防止・脱炭素化――の3点が最優先事項になるとの見方を示した。ただ、欧州への生産の再移管はコスト上昇と競争力の低下を招くことから、それができる分野は限られるとしている。