独自動車大手フォルクスワーゲン(VW、ヴォルフスブルク)は8日の監査役会で、VWブランド乗用車のラルフ・ブラントシュテッター最高執行責任者(COO)を7月1日付で同ブランドの最高経営責任者(CEO)に昇格させることを決議した。これまで同ブランドを指揮してきたヘルベルト・ディース社長はVWグループ全体の社長職に専念する。
ディース氏は2015年、VWブランド乗用車の社長に就任。VWグループ社長となった18年以降は両職を兼任してきた。
今回の人事交代の背景にはディース氏に対する従業員代表(事業所委員会)と労働組合の批判がある。ディース氏は競合BMWでコストカッターとして辣腕を振るった人物。VWへの移籍後も効率や利益率の向上に徹底して取り組んできた。これが労使のバランスを重視する同社の慣行に抵触したことから、ディース氏の経営スタイルに対する不満が従業員の間に広がっていた。主力モデル「ゴルフ」の新型車や電気自動車「ID.3」に技術上の問題が発生したのを機にベルント・オスターロー事業所委員長(監査役)がディース氏を批判すると、対立が一気に表面化した。同社関係者はロイター通信に「VWは他の企業と少し事情が違うということをディース氏はいまだに理解していないようだ」と述べた。